40代、50代で感じる「疲れやすさ」「息苦しさ」「むくみ」――これらの症状は、単なる加齢やストレスではなく、命に関わる心不全の初期サインである可能性がある。心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気だ。感染症でもがんでもないが、その5年生存率は約50%と、がんに匹敵するほど厳しい。しかし、適切な予防と早期発見でリスクを大幅に減らせる。
心不全の危険信号と進行のメカニズム
心不全は「じわじわと進行する」のが特徴。初期には自覚症状が乏しく、気づかないうちに病状が進む。代表的な症状は、息切れ(特に横になると悪化)、疲労感、足や顔のむくみ、体重増加、咳や喘鳴など。これらの症状が現れたら、早めに医療機関を受診すべきだ。
心不全の主な原因は、高血圧、冠動脈疾患(心筋梗塞など)、弁膜症、不整脈、糖尿病など。特に高血圧は、心臓に過度の負担をかけ、心筋を疲弊させる。また、肥満や脂質異常症、喫煙、過剰な飲酒もリスクを高める。
生活習慣で防ぐ9つのポイント
東洋経済オンラインの医療取材チームは、心不全予防の専門家である五十嵐医師(仮名)の助言をもとに、具体的な対策をまとめた。これらは特別なことではなく、高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病でも推奨される基本的な改善策だ。
- 食塩摂取を控える:高血圧や心不全の患者は1日6g未満が目標。加工食品や外食の塩分に注意。
- 野菜から先に食べる:血糖値の急上昇を抑え、満腹感を得やすい。
- 動物性脂肪の摂取を控える:飽和脂肪酸はコレステロール値を上げる。
- 糖質を摂りすぎない:特に精製された糖質は肥満や糖尿病のリスク。
- 適正体重の維持:BMI(体重(kg)÷身長(m)の二乗)が25未満を目標に。
- 体を動かす習慣:ウォーキングなど有酸素運動を週に150分以上。
- 禁煙:喫煙は血管を収縮させ、心臓に負担をかける。
- 飲酒はほどほどに:エタノールとして男性20~30mL/日以下、女性10~20mL/日以下(20mLはビール中瓶1本相当)。
- 睡眠時無呼吸症候群の検査と治療:無呼吸は心不全のリスク因子。診断されたら適切な治療(CPAPなど)を受ける。
五十嵐医師は、「睡眠時無呼吸の検査を除けば特別なことではありません。高血圧や脂質異常症など、ほかの病気でも言われている基本的な生活習慣の改善が、心臓の健康も守ることになります」と強調する。
冠動脈CTで「見える化」が予防の動機に
生活習慣の改善はわかっていても、継続が難しい。そこで五十嵐医師は、心不全の危険因子を持つ患者に、冠動脈CT(コンピューター断層撮影)という検査を他院と連携して行い、予防の動機づけにしている。冠動脈CTは、X線を照射して撮影した冠動脈の画像をコンピューター処理し、立体的に描出する検査だ。
「患者さんに、『悪玉コレステロールの値が○○だから食事に気を付けて』と説明しても、深刻度が伝わりません。しかし、血管の一部が狭くなっている画像を見せると、『このままだと詰まる』と、初めて自分事として捉えてくれます」と五十嵐医師は語る。
実際の冠動脈CT画像では、太い動脈から枝分かれした冠動脈の1つ(LAD=左前下行枝)が途中で狭くなっている様子が確認できる。この「見える化」により、患者は具体的な危機感を持ち、生活習慣の改善に取り組む意欲が高まるという。
冠動脈CTを受けられる場所
冠動脈CTは、主に循環器専門の病院やクリニックで実施可能。ただし、すべての医療機関で行えるわけではなく、設備や専門医の有無による。一般的には、心臓血管センターや総合病院の循環器内科で受け付けている。検査は保険適用となるが、条件がある(例:胸痛や心電図異常がある場合など)。気になる症状がある人は、かかりつけ医に相談し、必要に応じて紹介を受けるとよい。
心不全は、早期発見・早期対策が鍵。40~50代の疲れや息苦しさを軽く見ず、生活習慣を見直し、必要なら専門医の検査を受けることで、命を縮めるリスクを減らせる。



