歯科医が医院選びで重視するのは、目の前の治療だけでなく、10年後、20年後まで歯と口の健康を守る仕組みがあるかどうかです。では、歯科医が自分の家族を安心して通わせたいと思う歯科医院には、どのような共通点があるのでしょうか。注目したいのが「予防」と「施設基準」です。
歯科医が「家族を通わせたい」と思う歯科医院、2つの条件
私たち歯科医が自分の家族を通わせたいと思う歯科医院とは、どのような医院でしょうか。1つ目は、「治療」より「予防」に軸足を置いているところです。そしてもう1つが、医院の「施設基準」です。順番に説明しましょう。
歯科の先進医療の1つ「インプラント治療」は、抜けた歯の機能を天然歯に近い形で取り戻せる治療法です。インプラント治療は、インプラントを入れることがゴールではなく、しっかりしたお食事をする状態を長く保つことが本来の目的です。そのためには、治療完了後もメンテナンスを受け続けないと、インプラントの寿命が短くなります。
つまり、どんな治療後にも、メンテナンスという予防歯科が不可欠であり、さらには治療後の管理体制が重要となります。ポイントは治療後、どのくらいの間隔で、誰が、何を確認するのかが明確になっていること。ここで大きな役割を担うのが歯科衛生士さんです。
予防の質を左右する歯科衛生士の専門性
予防やメンテナンスの質は、歯科衛生士さんがどれだけ専門性を発揮できるかで大きく左右されます。歯科衛生士さんが、単なる治療のアシスタント(助手)として扱われるのではなく、予防のプロフェッショナルとして活躍している医院は、質の高い医療を行える医院だと言えます。
その判断基準になるのが、医院の「施設基準」です。これは厚生労働省が保険診療に関して、人員配置や設備、診療体制などについて設けた基準のこと。これが認められたということは、その医院の医療体制が一定の水準をクリアしていることになります。その中の最高峰と言えるのが「口腔管理体制強化加算」です。
この基準を満たすには、主に次の基準を満たす必要があります。
- 人員的基準(歯科医師・歯科衛生士の配置)
- 予防管理の実績(歯周病やむし歯管理の実績)
- 口腔機能管理の実績(小児や高齢者の口腔機能管理実績)
- 訪問診療の実績(訪問診療や医療機関連携の実績)
- 安全・緊急時の医療体制(AEDなどの救急医療設備の配置など)
「上位2割」の医院だけが満たす基準
中央社会保険医療協議会や地方厚生局の届出データから見ると、この基準をクリアしている医院は、全国の歯科医院(約6万7000件)のうち、まだおよそ2割程度にとどまります。つまりこの基準を満たす医院は、いわば「上位2割」の医院と言い換えられるかもしれません。
また、スタッフや連携する歯科技工士さんの給与を上げるための「ベースアップ」関連の基準もあります。導入しても医院の利益にはならず、むしろ課税対象になる分だけ持ち出しが増えます。それでも導入しているということは、スタッフや歯科技工士さんを大切にしているということであり、それは患者さんへのサービス向上にもつながると言えるでしょう。また、そうしたことを大切に考える院長の人柄が表れているとも考えられます。
ただし、この基準を満たすと、診療報酬が高くなり、患者さんの治療費が高くなります。冒頭でお話しした「治療費の高い歯科医院」とは、まさにこの基準を満たしている医院のことです。



