学校が春休みに入った3月下旬、福島県郡山市の住宅街にある株式会社「ケイリーパートナーズ」のオフィスでは、にぎやかに遊ぶ小学生と幼稚園児の姉妹を横目に、母親の女性がパソコン作業をしていた。仕事で手が離せない女性に、同僚が子どもの相手を買って出た。午後2時出社の社員が元気いっぱいに姿を見せた。
人手不足に悩む地元企業から経理や広報といったバックオフィス業務を請け負うケイリーパートナーズは、一般的な人材派遣業のように見えて内実は大きく違う。役員を含め19人のメンバーは全員が女性で、出社時間はバラバラ。育児などの事情に合わせて希望する時間に働く。フルタイムもいれば、週4時間勤務の社員もいる。
「働く人の事情や制約を前提に」
代表取締役の鷲谷恭子さん(49)は、「働く人、それぞれの事情や制約を前提に、仕事のあり方そのものを見直さないといけない」と語る。地元の郡山市で創業したのは2019年。都会より一足早く、人手不足の波が地域を揺さぶり始めていた。
鷲谷さんは大学卒業後にJR東日本に就職。地方勤務を経て東京本社のカード事業部で新規事業を企画立案するなど、順調にキャリアを重ねた。しかし入社6年目の27歳で子どもを妊娠すると状況は一変。つわりで出社できない日々に「戦力外になった」と感じた。本社の中枢で仕事を希望する同僚は多く、「私の代わりはいくらでもいる」と気持ちがふさいだ。健康的に仕事に集中できなければこれ以上のキャリアアップは無理だと悟り、07年に退社して地元に戻った。
キャリアを生かした仕事が限られる地方
子どもが成長するにつれて、もう一度「社会とつながる時間を持ちたい」との思いが強まった。だが地方では、キャリアを生かした仕事は限られる。周囲のママ友も、働く意欲があっても「仕事はパートしかない。キャリアアップできる可能性を感じない」と愚痴を漏らしていた。働きたい人はいるのに、受け入れる仕組みがない現状を目の当たりにした。
東日本大震災から5年後、鷲谷さんは一念発起してケイリーパートナーズを立ち上げた。同社は、働く人の事情に合わせた柔軟な勤務体制を整え、地域で埋もれがちな女性のキャリアや能力を生かす場を提供している。



