自民党の山田宏参院議員は6月9日、東京都世田谷区で開催された一般社団法人「知財・無形資産ガバナンス協会」(理事長・山田宏)の設立1周年記念式典で講演し、日本のコンテンツ産業の課題と展望について語った。山田氏は「成長戦略、知財戦略、国際標準戦略の3つが欠かせない」と強調し、漫画、アニメ、ゲームなど日本発のコンテンツを世界で稼げる資産に変えるための方策を提示した。
海外人気を収益に変えられない現状
山田氏は講演の後半でコンテンツ戦略を大きく取り上げた。日本の漫画、アニメ、ゲーム、日本食、日本酒、ファッションなどは海外で高く評価されている。「これらが海外の若者にとって日本を知る入り口になっている」と山田氏は説明した。しかし問題意識は「日本文化は人気がある」という話にとどまらない。むしろ「日本発コンテンツは世界で愛されているのに、その価値を日本側が十分に収益化できていない」という点にある。
日本の漫画やアニメ、ゲームは海外で強い存在感を持つ。一方で配信プラットフォームの多くは海外勢が握っている。作品の配信や二次利用、関連グッズなどの収益が必ずしも日本側に十分還元されない構造がある。「日本IPは強い。しかし、稼ぐ仕組みが弱い」。山田氏の講演はこの課題を正面から捉えるものだった。
IPを起点に複数市場へ展開
山田氏は漫画やアニメだけでなく、実写化による展開にも触れた。IPを実写ドラマや映画に広げれば、舞台、ファッション、観光、飲食、音楽など周辺領域にも波及する。「作品を単体で売るだけでなく、IPを起点に複数の市場へ広げる発想が必要になる」と述べた。
そのためには制作現場の体制も変わらなければならない。AIやVFXなどのデジタル制作技術が進む中で、監督やプロデューサーに求められる能力も変化している。山田氏は「古いながらの制作慣行だけでは、世界市場で戦う映像コンテンツを作ることは難しい」との認識を示した。制作人材の育成や、スタジオ機能の強化もコンテンツ戦略の重要な課題になる。
クリエイターを守らねば産業は育たない
日本のコンテンツ産業の強さは、大企業だけで作られているわけではない。山田氏は同人文化や個人クリエイターを含む裾野の広い創作の豊かさにも言及した。コミックマーケットなどには世界中から多くの人が集まる。日本にはプロになる前から絵を描き、物語を作り、キャラクターを生み出す人々が数多くいる。こうした層の厚さこそが、日本のコンテンツを支えるエコシステムになっている。
山田氏は現場のクリエイターについて「この人たち、この子たち、この方々を、やっぱり我々は愛さなきゃいけない」と語った。これは情緒的な表現であると同時に、政策的にも重要な視点である。コンテンツ産業を伸ばすなら、その源泉であるクリエイターを守らなければならないからだ。
制作現場にはなお課題が残る。契約書がないまま仕事が進む。古いながらの慣行で対価が十分に支払われない。フリーランスやデザイナーが不安定な立場に置かれる。こうした環境のままでは、若い才能が安心して創作を続けることは難しい。
AI時代に問われる声と肖像の権利
山田氏は講演で、AI時代の権利保護にも言及した。AIによる生成コンテンツが増える中で、クリエイターの声や肖像が無断で利用されるリスクが高まっている。知財戦略の一環として、こうした権利保護の枠組み整備が急務だと指摘した。
講演では「知財・無形資産ガバナンス協会」の活動にも触れ、日本発のコンテンツを文化発信にとどめるのではなく、世界で収益を生む知財・無形資産として育てる必要性を強調。コンテンツを「好きな人が楽しむもの」から「国家成長を支える産業」へと位置づけ直すことが求められていると訴えた。



