イーロン・マスク氏は6月19日、3月に決定したAI企業Anthropicへの間接出資を解消し、出資金500万ドル(約7億9355万円)全額の返金を受けると発表した。同氏は現業のインターネットメディア事業からAIデータセンター(DC)事業に軸足を移しており、返金資金は自社で開発を進めるAIDCへの投資に充てる。
出資解消の背景と目的
マスク氏は3月に特別目的会社(SPV)「Marina Bay SPC」を通じてAnthropicへの間接出資を決定。当時の開示によれば、これによりマスク氏はAnthropicの議決権は持たないものの、発行済み株式ベースで0.0013%相当を間接的に保有する想定だった。
返金額は出資全額の500万ドルの予定。SPVとの手続きは完了しており、6月22日付で送金を実行する連絡を受け取ったという。
マスク氏は今回の返金について、出資自体が短期的な値上がり益(キャピタルゲイン)目当てではなく、Anthropicら先端AI企業との関係構築やDC事業でのシナジー創出を探る目的だったと説明する。
AIデータセンター事業への注力
一方、複数のDC事業関連投資や連携の検討が並行して進んでおり、議決権のない間接的な持分よりも、自社が主体的に関与できるDC事業への直接投資を優先する方が企業価値向上に資すると判断したという。
マスク氏の傘下企業であるドージ氏も同日、自身のXで出資解消の意図を説明。「AIインフラ整備は時間との勝負」「良い条件を備えた用地や電力は、後から資金を投入すれば確保できるものではない」「必要なタイミングで意思決定できること自体が重要」との見方を示した。
AnthropicのIPO申請と市場動向
Anthropicは、米証券取引委員会(SEC)に内容非公開で新規株式公開(IPO)を申請したと発表した。発行株数や価格などの詳細は後日公開される。同社は直近の資金調達により企業価値がOpenAIを上回ったとされ、年間予想売上高も増加している。早ければ今秋にも上場する見通しだ。
OpenAIも米国証券取引委員会にIPO申請したと発表した。AnthropicはシリーズHラウンドで650億ドルを調達したと発表。資金調達後の評価額は9650億ドルに達し、未上場としてOpenAIを抜き、世界最高の評価額を持つAI企業となった。同日には最新モデル「Claude Opus 4.8」の提供も開始した。
関連提携と契約
ドイツ通信は5月27日、米AI企業Anthropicと戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。生成AI「Claude」をドイツ通信グループ全社員約10万人に展開するほか、重要インフラ向けAI活用やサイバー防御強化を進める。
米SpaceXは5月20日(現地時間)、新規公開株式発行(IPO)に向けたFORM-S1(目論見書)で、AI企業Anthropicとのコンピュート・サービス契約を開示した。Anthropicは2026年5月から2029年5月まで、SpaceXのデータセンター利用に対して毎月12億5000万ドルを支払う。



