「皇室典範」の改正案がなぜ波紋を呼んでいるのか。評論家で著述家の真鍋厚氏が、その背景を9分で読み解く。
民間人が天皇に? 批判殺到の理由
高市内閣が強引に進める皇室典範改正案に、批判が殺到している。その理由は、民間人として暮らしてきた旧宮家の男性が皇族となり、将来天皇に即位する可能性があるからだ。国民からすれば「昨日まで一般人だった人」が、血統を理由に突然トップに座ることになる。もしその人物にスキャンダルがあったり、象徴としてふさわしい振る舞いが見られなければ、国民は「この人は我々の総意に基づいた存在ではない」と判断するだろう。
第1条と第2条の矛盾
象徴天皇制は、憲法第1条「国民の総意」と第2条「世襲」の上に成り立つ。しかし、改正案が立法府の総意で進められた場合、この二つの噛み合わせが外れる瞬間が来る。第2条を優先した結果、第1条が崩壊するパターンだ。逆に、国民の多くが今の上皇・天皇陛下の血筋と直系の振る舞いを象徴として最もふさわしいと考えている場合、第2条の男系男子縛りが愛子内親王の即位を阻めば、「なぜ見ず知らずの遠縁の男性を連れてこなければならないのか」という不満が暴発する恐れがある。
民主主義と君主の正統性
歴史的に、君主制が民主化する過程で多くの国が危機に瀕してきた。それは「民主主義の正統性」(民意・選挙)と「君主の正統性」(血統)に引き裂かれる運命にあったからだ。日本の皇室もこの問題から逃れられない。象徴天皇制は「説明のつかない血統」の上に「説明のつく民意」を乗せるアクロバティックな構造であり、一度でも国民が納得しなければ、第1条の土台が消え、第2条の世襲システムごと崩壊する危険性を常に孕んでいる。



