岩屋毅前外相(自民党)は、今年2月の衆院選でネット上の誹謗中傷を乗り越え当選を果たした。特定のプラットフォーム上で「日本より中国を優先」「売国」といった内容が確認できただけで590万回書き込まれたという。岩屋氏はインタビューで、ネットが民主主義に与える負の影響と、保守政治家としての本分について語った。
ネット上の誹謗中傷の実態
総務省の「令和7年通信利用動向調査の結果」によると、インターネットの利用目的として昨年8月末現在で82.3%が「SNSの利用」と回答しており、情報やコミュニケーションの多くをネットに依存している。しかし、匿名性による行き過ぎた表現や誹謗中傷行為も少なくない。昨年度、違法・有害情報相談センターに寄せられた相談件数は6715件に及び、同センターが2009年に設立されて以降で最多を記録した。
政治や選挙では、2024年からその影響が顕著になった。今年2月の衆院選では、中道改革連合の岡田克也氏らについて執拗なデマが流され、多くのベテランが次々と落選。自民党の岩屋毅氏も、確認できた特定のプラットフォームだけで590万回も「日本より中国を優先」や「売国」といった誹謗中傷内容が書き込まれた。高市早苗首相自身も誹謗中傷動画疑惑の渦中にいる。
岩屋毅氏へのインタビュー
――近年、政治対立が激化している印象があります。インターネットがそれを加速しているのではないですか。
「ネットと民主主義について、私はかなり期待していました。大分県議会議員になったばかりの頃、平松守彦知事が『大分パソコン通信アマチュア研究協会(COARA)』を立ち上げ、私もパソコン通信で有権者と意見交換を始めました。それまでは直接会うか、電話か手紙しかなかった。時間と空間を超えてやり取りできる時代に感動しました。インターネットは民主主義を成熟させ、深化させるものだと思っていました。しかし、ここ数年の傾向を見ると、ネットで政治を語る際に非常に攻撃的で乱暴になるという『負』の部分が強く出ている。これは強く懸念すべき問題です」
――「岩屋を退治する」という言葉に衝撃を受けたと聞きました。
「はい。そうした攻撃的な言葉がネット上で拡散され、多くの人がそれを真に受けてしまう。民主主義の根幹である議論の場が、デマや誹謗中傷で歪められています。本来、保守政治家は粘り強い対話によって社会の統合を図るべきです。しかし、今の自民党は『本来の保守』を見失っているように思います」
民主主義が直面する大きな危機
岩屋氏は、ネット上のデマが民主主義のプロセスを破壊する危険性を指摘する。「選挙は政策や能力で争われるべきですが、デマで候補者の評価が歪められれば、有権者は誤った判断をします。これは民主主義の根幹を揺るがす危機です」
その上で、保守政治家が取るべき道として「粘り強い対話」を挙げる。「ネット上で感情的な応酬をするのではなく、事実に基づいた冷静な議論を続けることが重要です。また、プラットフォーム事業者には誹謗中傷への対策を徹底してもらう必要がある。法律の整備も含め、総合的な対応が求められます」
粘り強い対話によって統合につなげる
岩屋氏は「保守政治家の本分は、社会の分断を乗り越え、統合を図ること」と語る。「ネット上のデマに惑わされず、有権者一人ひとりと向き合い、丁寧に説明する。その積み重ねが信頼を取り戻す道です」
最後に岩屋氏は「民主主義は完璧ではないが、最善のシステムだ。その価値を守るためには、私たち政治家だけでなく、メディアや市民も含めた努力が必要だ」と訴えた。



