図書館統廃合の波に抗う「民主主義の砦」の価値と使命を再定義
図書館統廃合の波に抗う「民主主義の砦」の価値

検索エンジンや生成AIが情報入手の主流となった現代において、なぜ「本の森」たる図書館が必要なのか。財政難を背景に各地で図書館の閉館や統廃合が進む中、自治体行政に長年携わってきた片山善博・大正大特任教授(元鳥取県知事、元総務相)は、「今ほど公共図書館の役割が増している時代はない」と断言する。古い書物が漂わせるノスタルジックな雰囲気を超え、図書館には「民主主義の砦」としての重要な使命があるという。

格差是正機能を備えた知的インフラ

片山氏は図書館を「民主主義を下支えする知のインフラ」であり、さらに「民主主義の砦」と位置づける。地方自治は「民主主義の学校」と称されるが、それは市民が主体的に考え、地域課題を自ら解決する営みである。しかし現実には、そうした自立した市民を育む知的環境や情報環境は経済力や市場の論理に左右されがちだ。その中で公共図書館は、本を購入できない家庭の子どもにも無料で質の高い読書環境を提供し、誰もが平等にアクセスできる格差是正装置としての機能を備えた「知的自立支援」の拠点だと強調する。

鳥取県知事時代の「知の地域づくり」

片山氏は鳥取県知事在任中、「知の地域づくり」を掲げ、図書館行政を地域振興の中核に据えた。具体的には、県立図書館の館長にエース級の職員を登用し司書資格を取得させ、年間約1億円の図書購入費を確保。ビジネス支援や医療情報提供といった「課題解決型」のレファレンスサービスを立ち上げた。財政難や過疎化に悩む地域が自立するには、交付税や補助金に頼るのではなく、住民自身が主体的に情報を得て地域課題に取り組むための知的拠点が必要だと考えたからだ。図書館を単なる資料貸出の「箱物」ではなく、市民一人ひとりの自立を支え、地域の力をボトムアップする社会インフラと再定義した。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

SNSと生成AI時代の新たな課題

昨今はSNSや生成AIの普及により、情報の質や信頼性が問われる時代となった。片山氏は、こうした環境下で図書館の役割はむしろ増大していると指摘する。図書館は司書による専門的なレファレンスサービスを通じて、利用者が信頼できる情報にアクセスできるよう支援する。また、図書館は地域のコミュニティ拠点としても機能し、人々が対話し、多様な意見に触れる場を提供する。これらは民主主義の基盤を強化する上で不可欠な要素である。

統廃合の波と図書館の未来

しかし、財政難を理由に図書館の閉館や統廃合が進んでいる。片山氏はこの動きに警鐘を鳴らし、「図書館は短期的なコスト削減の対象ではなく、長期的な投資として捉えるべきだ」と訴える。図書館が果たす教育的・社会的な価値を適切に評価しないまま統廃合を進めれば、地域の知的基盤が弱体化し、結果的に民主主義の質が低下する恐れがあると警告する。

「民主主義の砦」としての使命を守れ

片山氏は、図書館の価値と使命を再認識し、守り抜く必要があると強調する。図書館は単なる本の貸出施設ではなく、市民の知的自立を支え、格差を是正し、民主主義を下支えする重要なインフラである。財政難や時代の変化に直面しても、その本質的な役割を見失わず、地域社会の持続可能な発展に寄与する図書館のあり方を模索すべきだと結論づけている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ