金融庁と東京証券取引所は2026年7月21日、上場企業の行動原則を定めた「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」を5年ぶりに改定した。今回の改定では、設備投資や研究開発といった成長投資、現預金を含む経営資源の使い方について、企業側に具体的な説明を求める内容が盛り込まれた。民間の成長投資を後押しし、経済活性化につなげる狙いがある。
原則数83から30へ大幅削減、新たに「解釈指針」を導入
指針は2015年に初めて策定され、今回が5年ぶりの改定となる。企業が株主や顧客、従業員など幅広い関係者の立場を踏まえ、透明で公正な経営判断を行うための原則をまとめている。策定から10年余りが経過し、国内の企業統治改革には一定の進展がみられる一方、企業が順守すべき「原則」の数が増えすぎて形式的な記載にとどまるケースが目立っていた。また、企業に求められる資本効率の向上についても、株主還元など短期的な方策に偏っているとの指摘が出ていた。
このため今回の改定では、企業が中長期的な企業価値の向上に向けた本質的な取り組みに注力できるよう、原則数を計83から30に絞り込んだ。新たに原則への対応を支援する「解釈指針」を設け、具体的な手法や個別企業によるモデル事例も示した。
取締役会の役割と経営資源配分の明確化
また、取締役会の役割として、成長投資や事業構成(ポートフォリオ)の見直しなど、経営資源の配分について具体的に説明すべきだと明記した。現預金などの資産を成長投資に有効活用できているか、不断に検証することも求めた。金融庁は「企業価値向上のための本質的な議論を促す」と説明している。
このほか、投資家の判断材料となる有価証券報告書について、株主総会の3週間以上前に提出することが望ましいと記載。頻発する外部からのサイバー攻撃や、サプライチェーン(供給網)が途絶するリスクへの対応も追記した。
法的拘束力はないが「コンプライ・オア・エクスプレイン」を採用
指針には法的拘束力はないものの、原則を守るか、守らない場合は理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」と呼ばれる考え方を採用。機関投資家の行動原則「スチュワードシップ・コード」と合わせて、企業に改革を促すことが期待されている。
経産省も「成長投資ガイダンス」を策定
一方、経済産業省は同日、コーポレートガバナンス・コードの改定に合わせ、企業や投資家向けの新たな実務指針「成長投資ガイダンス」を策定・公表した。株主還元や自己資本利益率(ROE)など資本効率を過度に重視する姿勢を改め、成長投資の拡大を求める内容だ。短期的な財務指標にとらわれず、中長期的に一定の規模と継続性をもった大胆な成長投資が求められると指摘した。



