外国人が事件の当事者となった場合、捜査や裁判に立ち会う司法通訳の役割が極めて重要になっている。来日する外国人のさらなる増加を見据え、専門性を持つ人材の確保と養成が急務だ。
司法通訳の役割と求められる専門性
司法通訳は、逮捕された外国人の供述を日本語に翻訳したり、裁判での日本語のやり取りを外国語に通訳したりする。日本語が理解できない外国人の人権を保障する上で、不可欠な存在である。司法通訳には、中立・公正であるという倫理観とともに、難解な法律用語を正確に伝える高い専門性が求められる。特に裁判員裁判では法廷供述が重視されるため、司法通訳の役割は一層重要になる。
誤訳による冤罪リスクと事例
一方で、通訳の質の向上が課題となっている。強盗致死罪などで起訴されたパキスタン人男性のケースでは、仙台高裁が捜査段階での供述が的確に翻訳されていなかったと指摘。その後、裁判がやり直され、無罪が言い渡された。また、窃盗罪などに問われた中国人被告のケースでは、大阪地裁の法廷で被告が仲間との共謀を「認めた」と通訳されたが、大阪高裁が昨年、誤訳だと認定した。不正確な通訳は、誤った捜査や冤罪につながる恐れがある。
人材不足と報酬問題
現在、司法通訳は捜査機関や裁判所が希望者を募り、面接などで確保している。語学能力や法律知識を問う統一的な試験はなく、少数言語に対応できる人材の確保にも苦慮している。全国の裁判所に登録されている通訳は2026年4月現在、63言語で延べ3237人。10年前から約600人減少した。「人の人生を左右しかねない」という精神的負担の重さや拘束時間の長さに対し、報酬が見合わないという声も上がっている。
認定制度と研修の充実が不可欠
高い能力や技術を証明する認定制度や公的な資格制度を創設し、報酬の見直しを検討すべきだ。法律知識の研修なども充実させる必要がある。同時に、警察官や検察官、裁判官、弁護士も、司法通訳が訳すのに困るような難解な言葉や冗長な表現をできるだけ避ける配慮が大切だ。
AI通訳技術の活用と課題
AI(人工知能)などによる自動通訳技術が急速に進化している。本格導入には、精度や個人情報の漏えいといった課題を克服しなければならないが、司法通訳を補助する形での活用も視野に入れながら技術開発を進めてほしい。日本で適正な捜査や裁判が受けられないという評価になれば、国際的にもマイナスとなる。優れた司法通訳を育成し、司法手続きへの信頼を確保することが不可欠だ。



