政府が消費税減税関連法案を閣議決定し、臨時国会に提出した。しかし、その妥当性について国民の十分な理解を得られるか、いまだ懸念や疑問が残る。
首相の説明と不明確な点
高市早苗首相は国会答弁で、2年間限定での飲食料品の消費税減税と、中低所得者向けに先行実施する所得連動型給付制度の組み合わせが、物価高の支援策として「十分性と迅速性の観点から最善の方法だ」と述べた。
だが、政府は財源確保策や給付制度の対象となる年収水準・支援額など、本来なら法案審議で吟味すべき内容を明示していない。そこがあいまいでは今後の与野党論議も深まるまい。首相には、より具体的で納得できる説明を尽くす責任がある。
財源問題の論拠
首相は所信表明演説で、財源問題について「特例公債(赤字国債)に頼らずに確保することとしており、ご心配には及ばない」と語った。ならば明確な論拠を示すべきだ。
政府は年末に向けた予算編成過程で歳出・歳入を見直して財源確保策を示す方針だが、それまでの間、財源論を脇に置くわけにはいかない。防衛費などの歳出増も見込まれる。その中で減税財源を十分に確保できるのか。こうした懸念を法案審議で払拭できるかが問われる。
税率復帰時の混乱と社会保障への影響
2年後に税率が戻る際の混乱も気がかりだ。関連法案には、経済状況次第で減税の延長を可能にする「景気条項」がない。ただ、大規模災害や感染症などの緊急時には「臨機応変に判断する」(高市首相)としている点には留意が必要だ。税率が元に戻れば実質的な増税となる。
首相は、中低所得者向けの給付制度が2年後に本格導入へと移行するため、実質増税の打撃も「相当程度緩和される」としているが、制度の対象外となる所得層も多い。その支援のために別途、巨費を投じる可能性はあるのか。そうした点も明確にすべきである。
消費税は社会保障を支える基幹税だ。初めての税率引き下げで、将来の社会保障財源に不安が生じることは許されない。首相は所信表明演説で「国民の手取りを増やし、暮らしを豊かにしながら財政の持続可能性も確保する」と述べ、その両立こそが「責任ある積極財政」だと訴えた。その言葉の真価が消費税減税への対応で問われていること改めて銘記しておきたい。