パンチパーマ発祥の地とされ、任俠映画の舞台にもなった北九州市。JR小倉駅から徒歩10分ほどの場所に、バー「コットンダンサー」がある。1981年にオープンし、音楽やアート、ファッションを語る人々が夜な夜な集ったが、コロナ禍で客足が遠のき2024年末に閉店した。
その店を枝光比菜乃さん(30)が昨年6月に再び開けた。「みんなで語り合える場が、この街には必要だった」と語る。
地元で挑戦し続ける若者
市内で生まれ育ち、北九州市立大学で学んだ枝光さん。東京での生活を思い描いた時期もあったが、今は地元を離れる気はない。「自分がやりたいことに挑戦できて、困ったときには街の顔役に相談できる距離感。私にはこの街の規模がちょうどいい」という。
大学の入学式では新入生代表としてあいさつ。まちづくりを学ぶ社団法人のメンバーとして市に地域活性化策を提案したこともある。クラウドファンディングで集めた資金を元に、自転車愛好家が集うサイクルステーションや、缶詰をアテに杯を交わす屋台を運営した。
「Keep Portland Weird」が人生を変えた
学年が進むにつれ周囲は就職活動を始めたが、組織に縛られる人生は描けなかった。あこがれる大人を訪ね歩き将来を考えたが、答えは見つからなかった。
大学4年時に渡ったアメリカ・ポートランドで目にしたスローガン「Keep Portland Weird」が人生を決定づけた。街の至る所で目にしたその標語が、彼女の価値観に影響を与えた。
連載「8がけ社会」では、人手不足の未来に向けたヒントを探る。足りないのは人なのか、働きたいのに働けない現実、技術を生かせず細る現場。若者が来ないのではなく、受け入れる価値観が追いつかない。必要なのは仕組みの更新ではないのか――。「当たり前」を問い直す現場から、人手不足の向き合い方を考える。



