消えゆく「ディーゼル超特急」イギリスHSTの軌跡 日立製新車に世代交代
消えゆくディーゼル超特急イギリスHSTの軌跡

イギリスで長年親しまれた高速列車「HST(High Speed Train)」が、日立製作所製の新型車両「800系」に置き換えられ、その姿を消しつつある。1970年代に登場したHSTは、最高時速200kmで非電化路線を走るディーゼル超特急として、半世紀にわたりイギリスの鉄道網を支えてきた。

HST誕生の背景:APTの失敗とディーゼルへの回帰

1960年代、イギリス国鉄は高速新線を建設する代わりに、在来線を高速化するため、車体傾斜装置を搭載したAPT(Advanced Passenger Train)の開発を進めていた。しかし、資金調達が難しく、車体傾斜装置の信頼性向上に多額の費用を投じても成功せず、開発費は膨れ上がった。そこで、国鉄内部ではディーゼルエンジンで客車を牽引・推進するシンプルな高速列車を導入すべきとの声が高まった。

当時、日本では東海道新幹線が開業し、電車による高速化が進んでいたが、イギリスでは主要幹線にも非電化区間が多く残っていた。地方都市への直通運転が可能なディーゼル列車を支持する声が強く、APTとは別の新しい高速列車の開発が並行して進められることになった。

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HSTの開発と量産:既存技術の集大成

HSTは既存の技術を活用して開発され、1972年に試作車として41型(Class 41)ディーゼル機関車とマーク3型客車が製造された。これをもとに量産車の43型(Class 43)ディーゼル機関車が誕生し、マーク3型客車はそのまま量産された。HSTはAPTの開発遅れを横目に、1974年に量産が開始され、投入路線に応じて客車は6~9両編成で構成された。1982年までの間に合計95本が製造され、イギリス国鉄の主力高速列車として活躍した。

HSTは非電化のグレートウェスタン本線などで最高時速200kmでの運転を実現し、「ディーゼル超特急」の異名を取った。そのシンプルな設計と高い信頼性により、半世紀にわたって運用され続けた。

日立製新車への世代交代

しかし、老朽化と排出ガス規制の強化に伴い、HSTは日立製作所が製造した「800系」などの新型車両に順次置き換えられている。800系は電化区間と非電化区間の両方を走行可能なバイモード車両で、より環境に優しく、高速性能も向上している。HSTの運行は減少し、2020年代に入ってからは多くの路線で引退が進んでいる。

HSTの功績と遺産

HSTは、イギリス鉄道の高速化に大きく貢献し、非電化路線でも高速運行を可能にした先駆的な存在だった。その設計思想は、後の車両開発にも影響を与え、現在のイギリス鉄道の基盤を築いたと言える。鉄道ファンからは今なお根強い人気があり、一部の保存鉄道で動態保存される車両もある。

「HSTはイギリス鉄道の歴史に残る偉大な列車でした」と、欧州鉄道フォトライターの橋爪智之氏は語る。その姿は、半世紀にわたる技術の進化と、時代の変化を象徴している。

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