皇室典範改正は象徴天皇制の根幹を傷つける乱暴な制度変更だ
皇室典範改正 象徴天皇制の根幹を傷つけた

戦後80年にわたって育まれてきた国民と象徴天皇の絆を無にするかのような、あまりに多くの欠陥を抱えた乱暴な制度変更である。国会と政府は直ちに、現在の皇室をいかに継承していくかを正面から検討し、皇室典範再改正を急がねばならない。

改正の内容と問題点

改正皇室典範が参院本会議で賛成多数により可決され、成立した。近く公布されて、その3か月後に施行される。改正後は、女性皇族は結婚後も皇室に残ることができるようになるが一代限りとされ、また夫と子は一般人のままだ。一方、戦後に皇籍を離れた旧宮家の男系子孫の一般男性を皇族の養子にして、その養子がもうけた男子に皇位継承資格を認める。

衆参両院正副議長が与野党協議を経て決めた「立法府の総意」にはない、女性皇族の夫と子の身分と、養子の子の皇位継承資格に一方的に踏み込む内容となった。

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皇位継承の不安定化

現在、皇位継承資格を持つ男系男子は、天皇陛下の次の世代では秋篠宮さまの長男、悠仁さまお一人だ。悠仁さまに男子が生まれなければ、今の皇統は途絶えてしまうことになる。旧宮家から養子を迎える制度は、皇位継承をむしろ不安定化させる恐れがある。

改正皇室典範は、養子の子の皇位継承資格について「実方(実家)の系統による」という一文を唐突に明記した。旧宮家は既に一般家庭であるにもかかわらず、改正典範では「実方の系統」との表記を用いて、事実上皇族扱いしていることも、強い違和感を禁じ得ない。

旧宮家の現実

今の旧宮家は現在の皇室の系統とは600年前の室町時代に分かれ、80年前に一般人となった。しかも、皇籍を離れた当時の男系男子は今の天皇陛下とは36~38親等離れているという。一般人として生まれ育った旧宮家の人たちは皇族になれば生活や権利の面で様々な制約を受けることになる。どんな人が養子縁組を希望するのだろうか。典範は改正されたとしても、その施行を凍結することも躊躇してはならない。

女性皇族の扱い

他方、天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまら女性皇族が結婚後、皇室に残ることができる仕組みは妥当だ。だが夫と子は一般人で、「宮家」ではないため、愛子さまらの一代で途絶える。女性皇族は公務を分担しさえすればよいと言うに等しい扱いであり、敬意に欠けているだろう。

戦後の天皇は憲法第1条で規定されている「国民統合の象徴」としての役割を一貫して模索し、天皇陛下や上皇さまを始めとした皇室の方々は災害などの危機に際し常に国民に寄り添い、国民の安寧と幸せを祈ってこられた。そうした姿が国民の敬愛を集めて象徴天皇制が定着してきた。

養子制度の白紙撤回を

今の皇室に代わり、一般人から皇族となる養子の子孫が新たな天皇として別系統を作れば国民が目にする皇室の風景は一変しよう。それで理解を得られるのか。旧宮家から養子を取る制度は白紙に戻して再検討すべきだ。国会と政府は女性宮家創設と、女性・女系天皇も排除しない皇位継承策を議論しなければならない。

政府は今回の改正は公務を分担する皇族数の確保が目的だと強弁している。皇位継承の安定化については今後検討するとの規定を付則に設けた。そうであるなら、皇位継承安定化を議論する有識者会議を設置すべきだろう。2005年の政府有識者会議報告書は、旧宮家の皇籍復帰は「極めて困難だ」と否定し、「女性・女系天皇への途を開くことが不可欠だ」と記した。

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分断を招く議論を避けよ

今回の改正を受けて養子縁組が成立し、養子に男子が生まれれば、養子の子孫の皇位継承資格が既成事実化する可能性がある。悠長に構えている時間はない。養子制度を巡って世論は分かれている。与野党は「静謐な環境」での議論が必要との共通認識を持っていたはずなのに実際は、拙速な議論で衆参両院とも質疑を1日で終わらせた。質疑に時間をかければ賛否が割れて「立法府の総意」が成り立たず、改正案の基盤が崩れることを恐れたのだろう。

自民党などは女性・女系天皇論を頑なに否定している。「男系男子」を絶対視して天皇の地位を巡る世論が分断されては、「国民統合の象徴」としての天皇の地位を傷つけ、日本の国家体制自体を揺るがせることになる。