全国にわずか300頭ほどしかいない「幻の柴犬」こと美濃柴犬。その血統を未来に残そうと、岐阜県立大垣養老高等学校の生徒たちが「美濃柴犬研究班」を結成し、繁殖活動に取り組んでいる。濃い茶褐色の毛と巻尾が特徴の美濃柴犬は、一般的な柴犬と比べて非常に希少で、その数は柴犬全体の約170分の1以下とされる。
戦時下の悲劇と美濃柴犬の危機
太平洋戦争中、政府は犬や猫の供出を命じ、多くの美濃柴犬が命を落とした。かつて将軍徳川綱吉が「生類憐みの令」で動物の殺生を禁じたのとは対照的に、戦時中は運命が一変。人間の都合で翻弄された犬たちの歴史がある。美濃柴犬もその例外ではなく、絶滅の危機に瀕した。
児童文学作家の今西乃子氏は、著書『われら 美濃柴犬研究班!ぼくらの学校で命をつなぐ』(主婦の友社)で、研究班の活動を紹介している。同書は、美濃柴犬の視点から語られる物語で、戦争で失われた多くの先祖の分まで命をつなぎたいという願いが込められている。
研究班の活動と使命
「ぼやぼやしていたら、ぼくたちの子孫はいなくなって、美濃柴犬というご当地犬が岐阜県から消えてしまう!」という危機感から、研究班は結成された。学校で美濃柴犬の繁殖を行いながら、血統の保存や遺伝学などの研究を進めている。まさに「美濃柴犬復活大作戦」である。
研究班の生徒たちは、戦時下で生き延びた美濃柴犬の子孫として、供出で亡くなった多くの犬の分まで命を未来につなぐ使命を自覚している。天国の先代たちの期待を背負い、きりっとした巻尾を立てる美濃柴犬の姿が印象的だ。
希少性と今後の課題
ジャパンケネルクラブによると、2025年の柴犬登録数は3598頭で、柴犬の平均寿命14.7年を掛け合わせると約5万3000頭と推定される。これに対し美濃柴犬は約300頭と、その希少性は明らかだ。研究班の活動は、単なる繁殖にとどまらず、地域の宝を守る取り組みとして注目されている。
(取材協力:岐阜県立大垣養老高等学校、写真:浜田一男)



