「インド太平洋の輝く灯台として、頼りにされる国になれます」。15日の全国戦没者追悼式で高市早苗首相はこう語った。
ただ、灯台は自ら光っていればいいわけではない。周囲からどう見え、どう安全につなげるのか。対立の構図が強まる北東アジアで、その意味が改めて問われる。
強まる中ロ朝の連携
式典の2日前、ロシアのプーチン大統領が北方領土の択捉島を初めて訪れた。直前にはサハリンでロシア太平洋艦隊の演習を視察。北朝鮮と軍事協力を深め、中国との共同軍事活動も重ねる。
中国、ロシア、北朝鮮は必ずしも一枚岩ではない。それでも3カ国が連携し日米韓などとの対立が深まれば、北東アジアが二つの陣営に分かれていく危険性が高まる。日本としては抑止を強めながらも、地域の分断を固定化させないことが課題となる。
FOIPの意義づけを問う
そこで考えたいのが、日本外交の柱とされてきた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の意義づけである。
- 中国包囲網と見られてきた「自由で開かれたインド太平洋」は変化を迫られている
- 物流や通信などの経路を戦略的に分散し、危機の際にも「接続」を保つことが重要だ
- 中国とは過度な依存を避けつつ対話を続け、競争と協力の両立をめざす必要がある
10年前の2016年8月2日、当時の安倍晋三首相はケニア・ナイロビで行われたアフリカ開発会議(TICAD)の基調演説で、アジアとアフリカを結ぶ「自由で開かれたインド太平洋」戦略を打ち出した。インド洋と太平洋の融合を掲げ、法の支配に基づく国際秩序の維持を訴えた。
しかし、その後の国際情勢の変化は、FOIPの前提を揺るがしている。中国の台頭に伴い、FOIPは「中国包囲網」と見なされることが多くなった。特に、中国が「一帯一路」構想で経済圏を拡大する中、FOIPは対抗措置としての色彩を強めた。
「接続」の維持が鍵
専門家の間では、FOIPの再定義が必要だとの指摘が出ている。物流や通信などの経路を戦略的に分散し、危機の際にも「接続」を保つことが重要だという。例えば、海底ケーブルの敷設ルートを多様化し、特定の国に依存しない体制を構築することが求められる。
また、中国とは過度な依存を避けつつ対話を続け、競争と協力の両立をめざす必要がある。経済的な相互依存関係を維持しながら、安全保障上のリスクを管理するという二正面作戦が求められる。
首相が掲げる「灯台」の比喩は、日本が周辺国にとって信頼できる存在であり続けることを意味する。しかし、そのためには一方的な対決姿勢ではなく、開かれた外交を通じて地域全体の安定を図ることが不可欠だ。北東アジアの分断を防ぎ、インド太平洋の平和と繁栄を実現するためには、対話と協力の枠組みを模索し続けることが重要となる。



