神社や寺を参拝した証しとしていただく「御朱印」の船版ともいえる「御船印」が人気を集めている。御船印は、船に乗った記念として紙に印刷されたデザインを購入するもので、現在171社が参加し、種類は約500種類以上に達する。20社分を集めると「一等航海士」、40社で「船長」、148社で最高位の「レジェンド船長」に認定される「御船印マスター」制度もある。
御船印とは?多彩なデザインと入手方法
御船印は一般社団法人「日本旅客船協会」が令和3年4月にスタートした。御朱印のように直書きするスタイルではなく、横10センチ、縦15センチの紙に航路や船体、観光地のシンボルなどの趣向を凝らしたデザインが印刷されている。
デザインは多種多様で、オリーブが特産の小豆島と神戸港を結ぶ「ジャンボフェリー」はオリーブの木が飛び出す3D仕様。海洋研究開発機構が発行する北極域研究船「みらいⅡ」は一般公開のときなど年に数回しか販売しないレアアイテムだ。新日本海フェリーと東京九州フェリーでは、船長がサインを書き入れてくれるサービスも実施している。
コロナ禍を乗り越え、参加社・種類が急増
「経営が厳しい船会社をアシストしたかった」と振り返るのは、情報発信や公式船印帳の発行などを担う「御船印めぐりプロジェクト事務局」の谷井大介さんだ。多くの船では食事やイベントが充実し、移動中も飛行機や新幹線にはない楽しみがある。「旅を楽しむきっかけになれば」との思いもあったという。
ところがスタートが新型コロナウイルスが猛威をふるっていた時期と重なり、多くの人が旅行を自粛。波乱の船出となった。しかし、コロナ禍がひと段落するころには各船への客足が戻り始め、御船印人気も高まっていった。46社が参加してスタートしたプロジェクトは現在171社に達し、この先も増える見込みだ。御船印の種類も増え、最も多い東海汽船グループで29種類、佐渡汽船では12種類をそろえる。トータルで約500種類を超えるまでに成長した。
コレクターの楽しみ方と御船印マスター制度
集めた御船印をまとめる公式船印帳「瑠璃」は46枚が貼れる。船会社が作ったものもあり、「さんふらわあ」の船印帳は、表紙にひのきを使った高級感あるデザインで人気が高い。
谷井さんは「船印帳の売れ行きから考えると2~4万人くらいが御船印を求めて旅をしていそう」と話す。コレクターは男性が6割くらいといい40~50歳代が多い。御船印が増えてくれば、「御船印マスター」に認定され、現在「一等航海士」が658人、「船長」が312人、「レジェンド船長」には99人が認定されている。
これまでフェリーなどの乗船が350回を超えるという埼玉県在住のイラストレーター、吉澤慶子さんは「もともと船旅が好きで、御船印が始まるとすぐに集め始めた」と振り返る。1枚目が名門大洋フェリーで、今では約250枚を収集し「レジェンド船長」になった。「お気に入りは船長からサインを頂いたマリックスラインの『クイーンコーラルプラス』の御船印」という。
御船印の今後と船旅の楽しみ方
船に関係する資料を展示する神戸市の「神戸海洋博物館」や、同館に併設された川崎重工グループの「カワサキワールド」の御船印もある。2025年大阪・関西万博のスペシャルサポーターに任命されていた「帆船BLUE OCEANみらいへ」を運航するNPO法人「ゼリ・ジャパン」が、不要となった海図を再利用して同じものが2つとない御船印にすることを計画するなど、さらに趣向を凝らした御船印が増えていきそうだ。
移動しながら、さまざまな楽しみが味わえる船の旅。まずは身近な遊覧船で最初の1枚を…。その後〝沼〟にはまって長距離フェリーで海を見ながら収集プランを練るのも、大人の趣味として悪くはなさそうだ。



