松山市の野志克仁市長(59)は4日に始まった市議会定例会で、11月15日に投開票される市長選に立候補しないと表明した。約49万人と四国の市町村で最多の人口を誇る松山市のかじ取りは、16年ぶりに新たな市長が担うことになる。
「次の市長にバトンを渡すのが最善」
野志氏は市議会での議案説明の後「市長選に出馬しないことをお伝えします」と切り出し、「5期目をめざすか自問自答してきたが、このタイミングで次の市長にバトンを渡すのが最善と判断した」と語った。
松山市出身の野志氏は、地元の南海放送のアナウンサーだった2010年、当時の中村時広市長(現・愛媛県知事)が知事選に立候補する際、事実上の後継者として市長選に挑み初当選した。
財政健全化とタウンミーティングに注力
知事、市長のダブル選だった14年には中村氏と共闘し、自民党松山支連などが支援した新顔らを破り再選。前回選の22年は無投票で4選を果たした。
野志氏は市財政の健全化に取り組んだ。市の借金にあたる市債残高を、年度途中に市長に就任した10年度末の3348億円(一般・特別・企業の3会計の合計)から、25年度末には2761億円(同)まで減らした。また、市民との直接対話の場となるタウンミーティングの開催に注力。これまでに150回を超えた。
土砂崩れ対応や再開発で批判も
だが対応に批判の声が上がったのが、24年7月12日未明に起きた松山城城山の土砂崩れだ。3人が犠牲になり、被災したマンションの住民らは市長出席のうえで住民説明会を開いてほしいと再三求めたが、開催は1度だけ。中村知事も記者会見で「説明会は何度もやった方がいいのでは、と県からは言い続けてきた」と苦言を呈した。
知事による野志市政への批判的な声は、JR松山駅周辺の再開発事業をめぐっても上がった。県が担当した線路の高架化は24年9月に終わったが、市が担当する周辺まちづくりの方向性が定まらなかった。この事態に、中村知事は「この10年、(県の鉄道高架化事業と)並行して早くやった方がいいと申し上げてきたが、いまだに白紙から脱出できていない(26年5月の定例記者会見)」と述べるなど、繰り返し野志市政を批判した。
市は8月末、同駅周辺に整備するにぎわい施設の事業協力者3社を発表。野志氏が「山積する課題の一つ」としていたものに一定のめどが立ったことで、勇退を決断したという。
市長選をめぐっては、いずれも新顔で前県議の中野泰誠氏(43)、市議の田中エリナ氏(41)、元四国電力社員の木下豪氏(44)の3人が立候補を表明している。



