香川県が鬼無駅に9000万円トイレ アート機能も
香川県が鬼無駅に9000万円トイレ アート機能も

香川県が高松市のJR鬼無駅前の公衆トイレを全面改修し、2026年3月22日に完成披露された。総工費は9000万円超で、全額を県が負担。壁面には天使の羽をイメージしたデジタル映像が投影される。

以前は男女共用のくみ取り式トイレで、住民や高校生から「汚い」「使いたくない」と不評だった。県は駅ホームそばの土地をJR四国から無償で借り、男女別と多目的用のトイレ本体に約7200万円、映像投影機器に約2000万円を投入。桃太郎をモチーフにした壁画もある。

映像は毎日午後7時15分~8時と8時20分~9時の計約1時間半、壁面に浮かび上がる。休日には学生制作の映像も流れる。ただし、この時間帯に鬼無駅に停車する列車はわずかで、周辺に駐車場もない。県文化振興課は「若手芸術家の作品発表が目的で、集客がメインではない」と説明する。

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実現までの経緯

県がJR四国の駅トイレ整備に予算を支出したのは初めて。2019年、自民党市議の北谷悌邦氏(62)が駅活性化を目指す住民グループを結成し、トイレ改善を求める声を把握。市議会で取り上げたが、高松市とJRは財政難を理由に対応しなかった。

転機は2021年秋の衆院選。香川1区から立候補した自民党の平井卓也・元デジタル相が街頭演説で「あのトイレを鬼無町のシンボルに変える」と訴えた。翌2022年夏の知事選では、平井氏の要請で立候補した池田知事(元国土交通官僚)が初当選。同時期に県議会最大会派・自民党県政会の会長・大山一郎県議をトップとする「アートトイレ実行委員会」が発足し、県と協議。2024年度当初予算に整備費が計上された。

完成を喜ぶ北谷氏は「アート機能も加わってびっくり」。平井氏は読売新聞の取材に「地元の要望を県に伝えた。県が主体となって実現した事業にコメントする立場ではない」とメールで回答した。

アートコンテンツの制作

県は昨年、若手芸術家育成のため投影内容を公募したが、集まった7点は単独では不採用。審査員が「プロのお手本が必要では」と述べたため、年末年始にコンペ形式でデジタルアート制作企業を公募。県立アリーナ(高松市)のプロジェクションマッピングを手がけた1社のみが応じた。

当初の契約額は約140万円だったが、完成式典でのお披露目を考慮し、映像を5分から10分に延長したため約200万円に増額された。

「後付け」の3条件

池田知事は7月の定例会見で、鬼無駅を選んだ理由として「県立高校(高松西高)の最寄りであること」を挙げた。県は2023年度、駅トイレ整備の条件として〈1〉県立高の最寄り〈2〉1日乗降客数1000人以上〈3〉水洗化されていない――を設定。鬼無駅はすべて満たし、同条件の高瀬駅(乗降客数1093人)より45人多かったことなどから整備を決めた。県関係者は「条件は鬼無駅の整備実現に向け、内部で説明するために作った」と明かす。

一方、三豊市は昨年12月、高瀬駅にバリアフリー対応トイレを備えた新駅舎を約1億3000万円で完成させた。市関係者は「地元の強い要望を訴えていたのに」と不公平感をにじませる。鬼無駅南西約3キロのJR端岡駅や高松市のJR栗林駅でもトイレの問題が残るが、県交通政策課は今後、駅トイレを整備する予定はないとしている。

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