改正労働施策総合推進法の施行に伴い、10月1日から事業主に対して方針の明確化など、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務化された。自治体も対象で、秋田県内の市町村も体制を整える。
クマ駆除めぐるライブ配信事案
2024年、秋田県内でクマの出没が相次ぐ中、鹿角市役所でクマの駆除に不満を持つユーチューバーと称する来庁者が、スマートフォンで職員らを撮影し、ライブ配信する事案が起きた。「クマを殺すな」と一方的な主張を繰り返し、市は警察に相談した。
市は対策義務化に合わせ、新たに対応マニュアルを策定。笹本真司市長は9月28日の記者会見で「行き過ぎた迷惑行為は市民全体の利益を損なう。公平で安定的な行政サービスを継続して提供できる環境を整える」と語った。
県内市町村の対応状況
読売新聞のまとめによると、県内25市町村のうち、13市町村が新たに基本方針やマニュアルなどの作成、11市町が作成済みの指針などの継続や改訂で対応する。八峰町は10月1日付でカスハラ対策に特化した「カスタマーハラスメント及び不当要求行為等防止条例」を施行した。
同町総務課によると、対応が必要となった場合は条例に基づいて「カスハラ等対策委員会」を設置し、行為者と職員の双方の意見を聞いてカスハラに該当するかを審議。認定された場合は書面で警告するほか、ホームページで事案を公表する。井川町も今年度中の条例制定を目指している。
名札変更やガイドライン制定も
大仙市では7月に制定したガイドラインに加え、10月から職員が身に着ける名札をフルネームから名字のみに変更し、顔写真を削除する対応を取る。隣の仙北市も昨年1月から名札を平仮名の名字のみとし、10月からは対応マニュアルを運用する。県は昨年3月にハラスメントに関する指針を改め、カスハラへの対応を明記している。
対策強化の背景には、全国的なカスハラ問題の深刻化がある。大仙市が昨年7月に実施した職員アンケートでも、過去3年間で「カスハラを受けた」か「見聞きした」と答えた割合が計54%に上った。「身体的な攻撃」があったと回答した職員もいて、同市総務課の柴田忠参事は「職員が一人で追い込まれないよう、組織的な対応が重要になる」と力を込める。
自治体ならではの課題
一方で、公共サービスを担う自治体ならではの難しさもある。9月16日の秋田市議会総務委員会では、対策の基本方針案に対して議員から「苦情との境界をどう判断するのか」「(対策を)盾に不都合を隠すことがあってはならない」といった意見が出た。
地方自治体向けにカスハラ対策のポイント集を作成した総務省公務員課女性活躍・人材活用推進室の安藤陽課長補佐は、該当する行為を類型化し、住民に広く周知することが重要だとした上で、「住民の権利を不当に侵害しないためにも、カスハラ対策は行政サービスの質の向上とセットであるべきだ」と話した。
教育現場でも指針
教育現場でも対応が進む。県教育委員会では、組織的に対応することなどを定めた教職員向けの独自指針を取りまとめ、10月1日付で県立学校や県立図書館など所管施設に通知した。
県教委によると、組織的な対応で個人に被害が集中することを避ける狙いがある。指針ではカスハラを著しい迷惑行為で、教職員の就業環境が害される行為と定義し、校長や教頭らが協議して該当するかを判断する。
相手の言動が悪質と判断した場合、県教委と協議した上で、弁護士への相談や警察への通報も検討する。このほか、日時や経緯などを記録して県教委や学校内で共有し、対応のノウハウを蓄積するという。