西バルカンのセルビアで政治的な動きが注目を集めている。アレクサンダル・ヴチッチ大統領は2026年6月27日、反政府デモの長期化による社会不安を理由に、2027年5月の任期満了を待たず数週間以内に辞任すると発表した。これにより、来年予定されていた大統領選と総選挙が年内に前倒しで実施される見通しとなった。
反政府デモの発端は中国企業の工事事故
ヴチッチ政権に対する国民の不満は深刻化している。反政府デモの直接的なきっかけは、2024年末に北部ヴォイヴォディナ自治州の州都ノヴィ・サドで発生した事故だ。ノヴィ・サドの駅でコンクリート製のひさしが陥落し、多数の死亡者が出た。この工事を請け負っていたのが中国企業だったことが問題視され、反中感情と政権批判が結びついた。
中国からの直接投資激減が経済的打撃に
セルビア経済は中国からの直接投資に大きく依存してきたが、2025年にはその流れが急減速した。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査部主任研究員である土田陽介氏によれば、中国企業の工事事故をきっかけに投資環境が悪化し、中国からの資本流入が前年比で約40%減少したとみられる。この経済的打撃が政権への不満をさらに強めた。
ハンガリーに続く親欧への揺り戻し
セルビアの動きは、東欧での地政学的な潮流変化を示唆している。ハンガリーでもオルバン政権に対する親欧派の台頭が見られており、セルビアでも同様の揺り戻しが起きる可能性が高い。ヴチッチ大統領は親中・親ロシア路線を強めてきたが、辞任後の選挙では欧州連合(EU)加盟を重視する親欧派勢力が勢いを増すと予想される。
EU加盟への道のりはなお遠い
しかし、セルビアのEU加盟交渉は長年停滞しており、課題は山積している。汚職問題やコソボとの関係正常化など、解決すべき事項は多い。仮に親欧派政権が誕生しても、加盟への道のりは依然として遠いとの見方が強い。



