ホルムズ海峡封鎖の影響で中東産石油の代替として米国産石油の輸入が急増しているが、在米ジャーナリストの岩田太郎氏は、米国では戦略石油備蓄の海外輸出に対する批判が高まっており、輸出制限や禁輸措置の可能性も否定できないと警告する。
米国で高まる「日本に石油を輸出するな」論
米国のソーシャルメディア上では「日本に石油を売るな」といった論調の投稿が増加している。中西部インディアナ州在住を名乗るXのアカウントは、「放出された米原油備蓄の大半はアジアと欧州の原油市場を安定化するために使われている。米国のためじゃない」と疑問を呈している。また、「米政府が備蓄原油を外国に売っているのは問題だ。備蓄は納税者の税金を原資に米国の緊急事態のために創設されたのに、外国のために使うなんてクソだ」と不満を爆発させるアカウントもある。
別のアカウントは「もっと備蓄を放出するだって?トランプが米国人のために何をしてくれたと言うんだ?」と手厳しい。こうした不満はSNSユーザーにとどまらず、米議会でも同様の動きが見られる。
「石油輸出禁止法案」が提出される事態
民主党左派のロー・カンナ下院議員は、米国第一主義的な観点から「米国民がガソリン価格高騰で苦しんでいるのに、なぜ石油を海外へ送る必要があるのか」と指摘し、今年4月に「ガソリン価格が7日連続で1ガロン当たり3ドル12セントを超えた場合に輸出を禁止する法案」を提出している。
カンナ氏の批判の背景には、イランとの和平交渉で米国に噴出する「トランプ非難」の論調がある。イランに対する戦争でエネルギー価格が高騰し米国民の生活が苦しくなる一方、イランは総額3000億ドル(約48兆円)もの「イラン復興基金」を受け取ることになった。米国民は戦争で得るものがなく、大損したという見方が広がっている。
さらに、民主党のジョン・フェターマン上院議員やエリサ・スロトキン上院議員、共和党のテッド・クルーズ上院議員などが超党派で「中国・ロシア・イラン・北朝鮮などが、米国が放出した備蓄を市場で入手することを防止する」法案を提出している。トランプ氏の政敵である民主党だけでなく、共和党からも批判が起きている点が、この動きの根深さを物語っている。
米国の戦略石油備蓄は半分以下に
米国の戦略石油備蓄(SPR)は、2022年のバイデン政権による大規模放出以降、大幅に減少している。2020年には約6億3800万バレルあった備蓄は、2026年現在で約3億バレル以下にまで減少したとされる。備蓄の本来の目的は米国の緊急時対応であり、海外への輸出は米国民の反発を招いている。
岩田氏は「米国産石油への依存は危険だ」と指摘する。米国で輸出制限や禁輸措置が実施されれば、日本は石油供給の重大なリスクに直面する。さらに、将来の「ナフサ危機」にも備えるべきだと警鐘を鳴らす。
今後の見通しと日本の対応
一方で、石油余りの可能性も指摘されているが、岩田氏は「石油の米国依存はやめるべき」と結論づけている。日本は中東産石油の代替として米国産石油に頼るのではなく、エネルギー源の多角化や備蓄の強化を急ぐ必要がある。



