国連事務総長選び本格化、中南米出身候補が軸に 米国の出方焦点
国連事務総長選び本格化、中南米出身候補軸に

今年いっぱいで退任するアントニオ・グテーレス国連事務総長(77)の後任選びが、まもなく本格化する。平和と安全を使命に掲げながらも世界各地で紛争が相次ぐ中、最大の資金拠出国である米国のトランプ政権から強い圧力にさらされる巨大組織のリーダーに誰が選ばれるのか。安全保障理事会の常任理事国である米英仏中ロの5カ国が拒否権を握る特殊な選出手続きの行方が注目される。

事務総長の役割と選出プロセス

今年で創設81年を迎える国連の事務総長は、193カ国が加盟する組織の事務方トップである。同時に国連の顔として外交にも関与し、人事権などで大きな権限を持つ。現職のグテーレス氏の後任は10代目の事務総長となる。任期は1期5年で、再選されれば最長2期務めることができる。

明文規定はないが、地域輪番制が慣例となっており、次は中南米出身者の番とされる。候補もほとんどが中南米出身だ。アルゼンチン出身で国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長(65)は早くから意欲を示している。

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女性候補と元首経験者らが名乗り

10年前の前回は初の女性事務総長誕生への期待が高まったが実現しなかった。今回も国連内外で「女性を選ぶべきだ」との声があり、女性4人が立候補している。

国連貿易開発会議(UNCTAD)事務局長のレベッカ・グリンスパン氏(70、コスタリカ)は国連開発計画(UNDP)の副総裁など国連機関の幹部歴が豊富だ。最も若いガイアナのキャロリン・ロドリゲスバーケット国連大使(52)は、昨年末まで2年間安全保障理事会の非常任理事国だった同国の代表で、国連では顔が知られている。エクアドルのマリア・エスピノサ氏(61)は2018~19年に事務総長に次ぐ国連の顔である国連総会議長として活発に活動した。

国家元首経験者も名乗りを上げている。ミチェル・バチェレ氏(74)はチリ初の女性大統領で、国連女性機関の初代事務局長や国連人権高等弁務官といった国連の要職も経験した。セネガルの前大統領マッキー・サル氏(64)は唯一中南米以外からの候補だが、ルール上は選出の可能性がある。

5大国の拒否権が鍵

実質的に選ぶのは15カ国で構成される安全保障理事会だ。候補を絞って全加盟国で構成される総会に示し、総会が任命する。つまり、安保理の常任理事国である米英仏中ロが拒否権を使わないことが選出の必須条件となる。人気投票ではなく、しばしば鋭く利害の対立する5カ国の間で「最も妥協できる人」が選ばれる特殊な仕組みだ。

特に注目されるのは、国連への最大の資金拠出国であり、国連に圧力をかけ続けている米国の出方だ。トランプ政権は気候変動対策や国際機関への関与を縮小する姿勢を示しており、候補者選びにも影響を与えるとみられる。

一部候補に反発も

立命館大学大学院国際関係研究科の越智萌准教授は「過去に国連の理念に沿う活動をしてきた候補には、今の5大国すべてに受け入れられるような行動をしてきた候補はいないと思われる。もしそのような人がいるならば、これまで国連の理念に沿わない行動をしてきたという逆説状況にある」と指摘する。

国連事務局はあくまで加盟国の意思に従う立場だが、事務総長には紛争調停や人権擁護で独自のイニシアチブを発揮することが期待される。しかし、大国の利害が対立する中で、誰がその役割を果たせるのか、選出プロセスは難航が予想される。

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