国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長が米トランプ政権から制裁対象に指定されたニュースなどで、「法の支配」への影響が指摘されている。そもそも「法の支配」とはどのような考え方で、なぜ大切なのか。京都大の中西寛教授(国際政治)に聞いた。
「法の支配」の起源は13世紀の英国に
「法の支配」という言葉が国際政治の世界で使われるようになったのは20世紀からだ。言葉としては諸説あるものの、一般的には13世紀の英国の大憲章「マグナ・カルタ」が起源とされている。
重要なのは、最高権力者である国王であっても法には従うという考え方だ。17世紀ごろには、議会が決めた法には国王も従うという形で一般化し、人々の安全や自由、人権を保障する考え方へ発展した。
国際社会の原則となるまで
国際社会の原則になる大きなきっかけは、第1次世界大戦後の国際連盟設立だ。それ以前は、戦争は主権国家の権利と考えられていたが、国際連盟のもとで、国際紛争を武力ではなく平和的、司法的に解決する考え方が生まれた。主権国家も国際法に従うという発想だ。
第2次世界大戦後には国際連合ができ、人権保護も重視されるようになった。1948年の世界人権宣言の前文にも、人権保護のために「法の支配」が重要という趣旨の文言がある。戦後の「法の支配」は、個人を圧政や不平等から守るという意味合いも帯びるようになった。
現在のように強調されるようになったのはこの20年
現在のように国際政治の文脈で頻繁に使われるようになったのは冷戦後だ。1990年代以降、西側を中心に、自由民主主義や人権、国際法などを重視する「リベラルな国際秩序」を目指すべきだという立場が強まり、「法の支配」もその原則の一つとされた。
国家指導者でも重大な国際法違反を犯せば法の裁きを受けるという考え方も強まり、旧ユーゴスラビアやルワンダの臨時の国際刑事裁判所などを経て、ICC設立につながった。
さらに中国のような非民主主義的な新興国が勢いを増した2010年前後から、西側では「リベラルな国際秩序を守るべきだ」という主張が強まった。「法の支配」が現在のように強調されるようになったのは、この20年くらいだと中西氏は話す。米国は「法の支配」と「力の支配」のバランスを重視しているという。