中国政府が2025年の経済成長率目標を「5%前後」と掲げ、今年1月に発表した実績はジャスト5.0%だった。前年の2024年も5.0%で、目標とぴったり同じ数字が2年続いている。経済アナリストの柯隆氏は「統計として、こんなことはありえません」と指摘する。
中国経済の潜在成長率は5〜6%とみられるが、実際には公表値ほど成長していない可能性が高い。米調査会社ロジウム・グループの推計では、2023年の実質成長率は1.5%(公表5.2%)、2024年は2.4〜2.8%(同5.0%)、2025年は2.5〜3.0%(同5.0%)と、公表値のおよそ半分だ。中国国内の経済学者にも「発表から3ポイント引いた数字が等身大だ」と語る人がいるという。
統計の「改竄」ではなく「定義」で数字が動く
柯氏は、中国の統計問題は単純な帳簿の書き換えではなく、統計の定義や算入項目の変更によって数字が上下する構造だと説明する。「今日からこの項目も算入する」と決めれば成長率は膨らむが、実態は変わらない。
なぜこうしたことが起きるのか。中国には切磋琢磨の政策論争がなく、悪い情報を上げれば責任を問われる体制のため、悪い数字はトップに届かない。地方の役人は出世のために良い数字を報告し、悪い数字を出した者が責任を問われる。その結果、数字は上に行くほど明るくなっていく。柯氏は「習近平国家主席本人ですら、本当の数字を知らされていないでしょう」と述べている。
人口統計も1億人規模の誤差
GDPだけでなく、人口統計も疑わしい。国家統計局は2025年末の人口を14億489万人と発表したが、米ウィスコンシン大学の研究者・易富賢氏は、実際の人口は2020年時点で12億8000万人程度と推計する。公式統計との差は1億人以上で、日本の総人口に匹敵する規模だ。
中国には統計を独立に検証する機関も自由な報道もなく、どちらが正しいか確かめる術はない。柯氏は「人口という最も基礎的な数字でさえ、1億人規模の幅をもって受け止めるしかない」と指摘する。
一人っ子政策の誤りと人口動態の悪化
中国の人口動態の歪みは、1980年頃に厳格化された一人っ子政策に端を発する。当時の最高責任者だった鄧小平らは、文化大革命後の失業問題と食糧不足への対応として「夫婦一組に子ども一人」という強硬策を打ち出した。しかし、この政策は人口の専門家による検証がなく、言論の自由がないため異論を唱える者もいなかった。
この政策は男女比も歪めた。農村では男児への執着が強く、胎児の性別告知が法律で禁止されているにもかかわらず、袖の下を渡せば医者が教えることがある。女児とわかると人工流産を選ぶ夫婦が一定割合いて、40歳以下では男性が女性より約3400万人も多くなった。
その結果、結婚が減り出生率も低下。2025年の出生数は792万人で建国以来最少となり、初めて800万人を割った。総人口も4年連続で減少し、2025年は1年で339万人減った。
柯氏は「どんな権力を握る政府でも、人口動態にだけは手を出してはいけません。一度崩れたバランスを元に戻すには、短くても50〜100年はかかります」と警鐘を鳴らしている。



