昨年5月、元世界王者の重岡銀次朗さん(26)が試合後に意識を失い、緊急手術を受けた。一命をとりとめたものの、重い後遺症が残った。同じく元世界王者で兄の重岡優大さん(29)は、弟の事故をきっかけに現役を引退。兄弟は郷里の熊本に帰った。
カフェを営む兄の日常
熊本県を震源地とした地震が起こる3日前、優大さんが経営する熊本市内のカフェ「Shinonome coffee(シノノメコーヒー)」を訪ねた。カウンターに立つ優大さんは、穏やかな表情だった。自家焙煎した豆で、丁寧にコーヒーをいれてくれた。キッチンを整理整頓しながら接客し、自家製のベーグルを焼く。その数日前には銀次朗さんが訪れ、数時間、カフェで過ごしたという。
「後悔はしない」と語る兄
「僕は、後悔はしないですよ。後悔しても時間は戻らない。ほかにやることがたくさんある」と優大さん。ただ、「あの日」を振り返ると、ふいにとがった感情が浮かぶ。「あの日は、いつもと明確に違うことがあった」
昨年5月24日、大阪市内での興行で、銀次朗さんは世界戦のリングに上がった。国際ボクシング連盟(IBF)ミニマム級王者ペドロ・タドゥラン(フィリピン)との再戦。タドゥランにはその前の試合で敗れ、ベルトを奪われていた。いつもはセコンドにつく優大さんだが、この日は諸事情でリングサイドの席で応援していた。
試合後の出来事
試合は激しい打ち合いになり、勝負は判定に持ち込まれた。最終12回が終わると、優大さんはリング上に駆け上がった。銀次朗さんの意識はもうろうとしていた。「もう終わったの?」と言った言葉は耳を離れない。



