フィリピン南部ミンダナオ島で、自治政府の樹立に向けた初の議会選が行われた。紛争から和平に至る過程を30年以上支援してきた日本側関係者の努力を多としたい。
初の議会選、第1党は過半数に届かず
14日に議会選が実施されたのは、ミンダナオ島の一部や周辺の離島で構成する人口約500万人の「バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域」だ。
暫定自治政府の首相率いる党が80議席のうち31議席を獲得して第1党となったが、過半数には届かなかった。連立交渉を経て11月にも自治政府首相が選出される。
日本の支援が和平合意につながる
フィリピンはカトリックが多数派だが、ミンダナオ島のこの地域はイスラム教徒が多く、1960年代から中央政府からの分離独立を求める武装闘争が続いた。
90年代に中央政府と反政府勢力の一部がいったん和平で合意したのを機に、日本は現地での支援活動を始めた。長年の戦闘で荒廃した地域の生活基盤を再建するため、国際協力機構(JICA)の職員らが、道路や用水路などが未整備の地域でも栽培可能な稲の導入を進めるなどきめ細かい支援を行った。
地道な活動を通じて得た信頼を生かし、2011年には、当時のアキノ大統領と反政府勢力のトップの極秘会談を成田空港近くでセットした。この仲介が、自治政府樹立を認める14年の包括和平合意につながったとされる。
平和定着へ、残された課題
議会選は何度も延期されたが、最終的に民主的な選挙が実現したことは大きな前進と言える。ただ、自治政府発足のめどは立ったものの、平和を定着させるためには、今後も当事者の自制と外部の支援が不可欠だ。投票日当日も銃撃事件があった。武装解除と、回収した武器の廃棄を着実に進める必要がある。
治安の回復に加え、武装解除された兵士らが農業などで生計を立てられるようにするための支援も重要だ。ミンダナオ島はニッケルなどの鉱物資源が豊富だ。情勢が安定すれば、日本を含む海外企業の有望な進出先となろう。
ミンダナオ島は反政府勢力とは別に、中東などのイスラム過激派が流入して活動拠点とした時期もあり、17年には国軍との戦闘で1200人が死亡した。テロの温床に逆戻りさせてはならない。
日本とフィリピンは、民主主義などの価値観を共有する友好国であり、近年は安全保障面でも関係を深めている。政府はJICAなどと協力し、きめ細かな対応を続けてほしい。



