2014年、日本の安倍晋三政権が集団的自衛権行使の一部容認を閣議決定した同年、中国軍幹部が日本との武力衝突を想定した準備を進めるべきだと提言していたことが、機密文書の分析で明らかになった。台湾統一を目指す習近平指導部が、台湾海峡での軍事的衝突時に日本が関与する可能性を強く警戒してきた実態が浮かび上がる。
文書の内容と入手経路
文書は2014年10~11月、台湾対岸の福建省で開かれた「全軍政治工作会議」での発言を記録したもので、南京軍区(現・東部戦区)の主要幹部、鄭衛平・政治委員の記述が含まれている。大東文化大学東洋研究所の鈴木隆教授が入手した。鈴木氏は「少なくとも中国軍内部では、習指導部発足から間もない14年当時から日米を『仮想敵国』とみなし、台湾有事に際して両国が軍事介入する事態を検討していたことを示している」と指摘する。
日本への言及と背景
文書では、日本に対する具体的な言及が複数確認された。鄭衛平氏は演説の中で、台湾問題における日本の関与を想定し、「日本が台湾海峡で行動を起こす場合、我々は断固たる措置を取らなければならない」と述べたとされる。この発言は、当時進行していた日本の集団的自衛権行使容認の動きを強く意識したものとみられる。
鈴木教授は、この文書が中国軍のトップレベルで共有された可能性が高く、実際の作戦計画に影響を与えたと分析する。また、2015年には中国が南シナ海で人工島建設を本格化させており、台湾海峡と南シナ海を連動させた戦略が早期から検討されていた証拠だと述べている。
現在への影響と今後の展望
2025年10月31日には、高市早苗首相と習近平国家主席が日中首脳会談を行ったが、台湾問題をめぐる緊張は続いている。高市首相は2025年11月、台湾有事が日本の存立危機事態に該当し、集団的自衛権を行使できる可能性を国会で答弁。中国はこれを強く批判している。
鈴木氏は「昨年の高市発言は日中対立激化のきっかけになったが、根本には日米の介入を排除して台湾を統一するという中国の長期的戦略がある。今回の文書はその戦略が少なくとも10年以上前から存在したことを示す重要な証拠だ」と解説する。
専門家は、中国が台湾統一を目指す過程で、日本や米国との偶発的な衝突リスクが高まっていると警告する。特に、台湾海峡での中国軍の活動増加や、日本周辺での中国艦艇の航行頻度上昇が懸念材料だ。今後の日中関係は、台湾問題を軸にさらに複雑化する可能性がある。



