モンゴル出身のツァガーンバートルさんが見た日本の職場の文化の違いとは
モンゴル出身者が語る日本の職場の文化の違い

モンゴル出身のツァガーンバートル・ソロンゴさん(49)は、現在、中古自動車の輸出を手掛けるビー・フォアード(東京都港区)でセールス部長のシニアマネージャーとして働いている。彼女が日本に来日したのは2015年、30代半ばの頃だ。仕事と育児に追われ、一度は断念した大学院での学びを、今度は海外で挑戦してみたいと、息子を連れて来日した。静岡県立大学大学院で経営学の修士課程を修めた後、2018年に同社に入社し、現在に至る。

アニメや旅行で親しんだ日本、職場での驚き

アニメや旅行を通じて日本の文化に親しんできたというソロンゴさん。一方で、日本の職場では、モンゴルとは異なるさまざまな文化やルール、仕事の進め方、さらには休暇の取り方まで、驚くことがたくさんあったと話す。

モンゴルと日本、働き方にどのような違いがあるのだろうか。

「なぜなぜ分析」と品質の高さ

ルールに対する考え方にも違いがあるという。日本の企業では、決められたルールを守りながら仕事を進めることが重視される。ルールが変更されれば、その内容が社内ツールなどを通じて細かく共有される。

「モンゴルの企業にもルールはもちろんありますが、状況によってルールの解釈が変わるんですよね」とソロンゴさんは振り返る。モンゴルで勤めていた企業では、スピードと結果を求められたと振り返る。仕事を止めず、まずは前に進めることを優先するため、業務上のルールに変更を加える場面もあったという。

ルールに対する認識の違いとともに、ソロンゴさんは、日本の企業が細部まで目を向ける点も印象的だったと話す。

「『なぜ起きたのか』を何度も掘り下げて、ミスを防ぐ分析手法(なぜなぜ分析)は海外でもよく知られています。そうした姿勢が、日本の品質の高さにもつながっているのだと思います」

モンゴルでは、問題をある程度解決したら次の仕事に進むというスピード感がある。「仕事にはスピードと柔軟性も必要なので、両方を合わせていければうまくいくんじゃないかなと思っています」

「3週間まとめて休む」モンゴルと、1日ずつ休む日本

入社して最初に驚いたことの一つが、職場での「あいさつ」だった。

朝、出社すると同じ部署のメンバーだけでなく、他部署の社員にも「おはようございます」と声をかける。帰るときには「お疲れさまでした」「お先に失礼します」と伝え、廊下ですれ違った相手にも「お疲れさまです」とあいさつする。

「これはビー・フォアードのカルチャーですが、モンゴルでは別の部署の人にまであいさつはしていませんでした。今はこのあいさつの良さを実感していて、人間関係やお互いを尊重し合うことにもつながっているのかなと思っています」

休暇の取り方にも違いがある。モンゴルでは「3週間まとめて休む」のが一般的だという。一方、日本では1日ずつ休む人が多いと感じている。

ソロンゴさんは、20代の頃、モンゴル国立大学の修士課程で統計学を学んだ。知識を生かし、モンゴル国家統計局で国家公務員として働いたほか、建設や飲食事業などマルチビジネスを展開する民間企業の戦略プランニング部で、プロジェクトマネージャーとして働いた経験を持つ。

仕事と家事に専念する日々の中で、中退した大学院のことが心残りだった。「もう一度モンゴルで大学に入学することも考えましたが、せっかくなら海外に行きたいと思います。息子も成長していたので、残りの人生ちょっと楽しく、みたいな感じです」

30代半ばに差し掛かり「今動かなければ、さらに難しくなる」という危機感もあった。日本のほか、オーストラリアやニュージーランドなど複数の大学院の研究室に手紙を送り、学費面や教授とのやりとりなども踏まえ、静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科への進学を決めた。毎日自習をめくりながら、日本語を勉強したという。

2018年、大学院の修了を控えていたソロンゴさんは、モンゴル人材を探しているという現職ビー・フォアードの求人を知り、アルバイトとして働き始めた。約1年後には正社員に登用され、海外物流の部長に配属された。

配属先でソロンゴさんが最初に担当したのは、車両を海外へ輸出するための書類作成や、船会社、現地の代理店などとの調整だった。必要な書類をそろえ、内容に不備があれば修正を依頼し、車両の出荷後には顧客へ書類を届ける。

「モンゴルには海がないので、海上輸送とかRORO船(車両が自走して船内に乗り込み運搬できる船種)とか、私には本当に全く知らない世界でした」と話す。同僚や先輩社員に教えてもらいながら、一つずつ仕事を覚えていった。