大手コンビニエンスストアの店頭で、おしゃれな衣料品が売られる光景が広がっている。主に食料品を買う場所というイメージが強いコンビニだが、手頃な価格と手軽さから支持を集めている。
ファミマのアパレルが売上高200億円突破
9月中旬、東京都港区にあるファミリーマートの旗艦店「ファミマパーク麻布台」では、黄、緑、青など色とりどりのTシャツや靴下が壁一面に陳列され、多くの人が品定めしていた。蛍光色の靴下を購入した都内の美容師の男性(44)は「カラフルな色の靴下は装いのアクセントになるので、複数持っていますよ。価格が手頃なのに、丈夫」と話す。
従来、コンビニでは急な必要に備えて無難な色の靴下や下着を少数置く程度だったが、近年は各社が衣料品の種類を充実させている。ファミリーマートは2021年からオリジナルのアパレルブランド「コンビニエンスウェア」を展開。パリコレクション参加経験のあるデザイナーの落合宏理さん(49)と素材選びから商品開発まで行い、現在は約100アイテムを取りそろえる。価格は靴下が429円、Tシャツが1498円、スエットパンツが2990円と手頃だ。
SNSなどを中心に評判が広がり、25年度の売上高は200億円を突破した。落合さんは「予想よりも早く受け入れられたことに驚きつつ、手応えも感じている。コンビニで服を買う文化の定着を目指していきたい」と話す。
ローソンとセブンも追随、若年層に照準
これまで大手コンビニが衣料品に本格参入してこなかった背景には、場所を取る割に売れるかどうかわからない効率の悪さがあった。コンビニに詳しい消費経済アナリストの渡辺広明さんは「コンビニは効率の悪い商品は入れないのが常識。だが、繊維に強い伊藤忠商事が親会社であるファミリーマートが着実に売り上げを伸ばし、しっかりやれば売れる可能性があると他社も追従している状況だ」と説明する。
ローソンは6月、子ども服ブランド「プティマイン」とテレビ東京系の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」と開発したオリジナルの子ども服を全国約1000店舗で販売した。20~30代の母親たちから好評で客層が拡大したといい、今後も子ども服の展開を検討している。担当する高橋伸明さんは「全国津々浦々に店舗があるのが強みだ」と話す。
セブン―イレブンは若年層に的を絞り、9月末から衣料品の拡充を図る。25年度の主な客層は50歳以上と年齢が高く、30歳未満はわずか17%だった。そこで20~40代の若年女性との接点を強化しようと、人気ブランド「ニコアンド」や「ローリーズファーム」のTシャツやラメ入り靴下など、トレンド感のある限定アイテム約30品を展開するという。
手軽さとタイパ志向が追い風に
ファッションジャーナリストの宮田理江さんによると、若い世代はネット通販で服を買うことに慣れてしまい、実店舗での買い物に「何を着て行けばいいのか」と身構えてしまう人もいるという。「自宅近くのコンビニなら、メイクも服装も気にせずに買える。陳列スペースが限られているので選択肢が少なく選ぶ時間がかからない。タイパ(時間対効果)を重視する若年層には魅力的で相性がいいのでは」と分析する。
また、大きめのサイズを着ることが流行し、試着ができないことも問題ではなくなっている。宮田さんは「コンビニで服を買うことが普通になってきている。今後各社がどう差別化していくのか楽しみ」と話す。
ディスカウントストアも衣料品を充実させている。「トライアル」を全国展開するトライアルカンパニー(福岡)は2019年頃から本格的に靴下や下着、Tシャツなどの自社開発を始めた。提携する工場の閑散期に生産をするなどして価格も抑えている。
「着心地や機能性にもこだわって服を作っていることを伝えたい」と、昨年11月には東京都世田谷区の三軒茶屋駅近くにアパレル専門店「リアルト」も開業した。担当する営業本部長の加藤了さんは「女性の支持が広がった。今後も衣料品を拡充していきたい」と意気込む。