世界的なEV(電気自動車)シフトの加速により、日本の自動車産業の雇用構造が大きな転換期を迎えている。専門家の試算によると、2030年までに100万人以上の雇用が直接的または間接的に影響を受ける可能性がある。特にエンジンやトランスミッションなどの従来型部品を製造する企業では、需要減少による雇用調整が避けられない見通しだ。
エンジン部品メーカーに深刻な影響
自動車産業の雇用の約3割はエンジン関連部品の製造に従事しているとされる。EVではエンジンが不要となるため、これらの部品メーカーは事業構造の抜本的な見直しを迫られている。ある部品メーカーの幹部は「エンジン部品の受注は今後5年で半減する可能性がある。社員の再教育や異業種への転換が急務だ」と語る。
一方で、モーターやバッテリー、パワーコントロールユニットなどEVに不可欠な部品の需要は急増している。しかし、これらの部品の製造には従来とは異なる技術や知識が必要であり、労働者のスキル転換が課題となっている。
政府の支援策と企業の対応
経済産業省は、自動車産業の雇用転換を支援するため、2024年度補正予算に数百億円規模の基金を計上する方針だ。具体的には、部品メーカーの技術者向けにEV関連技術の研修プログラムを提供するほか、異業種への転職を支援する職業訓練の拡充を検討している。
自動車メーカー各社も対応に乗り出している。トヨタ自動車は、グループ全体で従業員の再教育プログラムを強化し、2025年までに約3万人の社員にEV関連の研修を実施する計画を発表。日産自動車も、部品メーカーと協力し、EV向け部品の共同開発や生産ラインの転換を進めている。
地域経済への波及効果も懸念
自動車産業は多くの地域で基幹産業となっており、雇用への影響は地域経済にも波及する。特に、エンジン部品メーカーが集積する中部地方や中国地方では、雇用喪失が地域の消費や税収に打撃を与える可能性がある。ある地方自治体の担当者は「自動車関連企業の雇用が減少すれば、地域全体の経済が縮小する。国と連携した対策が不可欠だ」と懸念を示す。
専門家は「EVシフトは避けられない流れであり、雇用対策は待ったなしの課題だ。企業と行政が一体となり、労働者のスキル転換と新たな雇用創出を進める必要がある」と指摘している。



