製造業向けAIデータプラットフォームを提供するキャディ(東京都台東区)が急成長を遂げている。2017年の創業以来、累計調達額は257億円に達し、日経平均株価を構成する製造業メーカーの半数超を顧客に抱えるまでになった。同社の加藤勇志郎CEOは「AI時代こそ物理世界が復権する」と語り、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に新たな可能性を見いだす。
事業転換の背景:部品調達支援からデータ基盤へ
キャディは当初、板金加工品の調達支援サービスを手がけていた。顧客からCADや図面データを受け取り、解析して最適なパートナー工場を選定し、特注加工部品を製造・納品するビジネスモデルだ。この一連のプロセスを自社開発のソフトウェアで管理しており、それがコア技術となっていた。
しかし、4~5年前から顧客からの要望が変化した。「キャディが裏側で使っている仕組みそのものを販売してほしい」という声が増えたのだ。加藤CEOは「当社の部品事業を支えるソフトウェアを顧客に提供すれば、部品事業自体の価値は薄れる。しかし、部品事業は世界第3位の規模になっており、多くの顧客や受注残を抱えていたため、すぐには撤退できなかった」と振り返る。
同社は約1年かけて事業を統合し、ソフトウェアの提供へとシフト。現在の売り上げは100%がソフトウェアとなっている。
製造業AIデータプラットフォームの全貌
現在、キャディは自社を「製造業AIデータプラットフォーム」と位置づける。主力製品は、製造現場に散在するデータを収集・解析・構造化し、すぐに検索可能な形に整えるデータ基盤だ。具体的には、見積もりツール「キャディ クオート」に設計担当者が描いた図面を入力するだけで、最適な調達先が自動判定され、ワンクリックで見積もりを比較できる。
また、調達価格やサプライヤー情報、品質不良の履歴も解析・構造化が可能。設計部門では類似設計の標準化や流用設計も実現する。品質保証や製造など、さまざまな部門で活用できるアプリケーションがそろっている。
加藤CEOは「この夏には大きなアップデートを予定している」と明かす。製造業のデータ活用をさらに推進し、開発から量産までの期間を劇的に短縮する狙いだ。
AI時代における物理世界の復権
加藤CEOは「AI時代こそ物理世界が復権する」と主張する。デジタル技術が進化すればするほど、モノづくりの現場におけるデータの重要性が増すという。同社のプラットフォームは、図面やCADデータといった物理的な製品情報をデジタルで一元管理し、AIが解析することで、製造プロセス全体の効率化を図る。
「製造業は長年、データ活用が遅れていると言われてきた。しかし、AIの進化により、これまで活用できなかったデータが価値を持つようになる。キャディはその橋渡し役を担いたい」と加藤CEOは語る。
同社の顧客には、日経平均構成企業の半数超が含まれる。大手製造業がこぞってキャディのプラットフォームを採用する背景には、グローバル競争の激化やサプライチェーンの複雑化がある。デジタル技術を駆使した迅速な意思決定が求められる中、同社のデータ基盤は欠かせない存在になりつつある。
今後の展開と課題
キャディは2025年3月、シリーズCのエクステンションラウンドで91億円を調達。累計調達額は257億円に達した。資金は製品開発や人材採用、海外展開に充てる方針だ。
加藤CEOは「日本の製造業は強みを多く持つが、データ活用の面ではまだ改善の余地がある。キャディのプラットフォームを通じて、日本製造業の競争力強化に貢献したい」と意気込みを語る。
一方で、競合の台頭やデータセキュリティの課題も指摘される。同社はこれらの課題に対応するため、継続的な技術開発とパートナーシップの拡大を進める方針だ。



