自治体が物価高対策として実施する上下水道料金の減額措置について、一括検針方式の共同住宅の入居者に適用されない事例が相次いでいる。水道局に全戸分を一括支払いするマンション管理者が、減額分を入居者の請求に反映させていないためだ。自治体は管理者に減額を求めているが強制力はなく、対応に苦慮している。
福岡市で相次ぐ苦情
福岡市内の賃貸マンションに住む30歳代の男性は5月、管理会社からの水道使用料金請求書に困惑した。市は全90万世帯を対象に4か月分(2~5月検針)の下水道料金(1世帯平均6700円)を無料化したが、請求額は変わらなかった。約250戸のマンションは一つのメーターで一括検針し、管理者がまとめて支払い、入居者は管理者に定額月約3000円を支払うルール。男性は「不公平だ」と不満を漏らした。
福岡市によると、同様の苦情が市に相次いでいる。国推計では市内の共同住宅は約4万棟あり、一括検針の共同住宅(約1万棟・20万戸)の一部で問題が発生。市は3月末から3回、約6000の管理者を対象に実態調査を実施。具体的結果は非公表だが、減額反映を「していない(する予定はない)」との回答が一定数あった。管理者と入居者間の契約のため、罰則はない。
問題のマンション管理会社の担当者は「請求額を一斉に変え、数か月後に戻す作業は膨大で不可能」と釈明。入居者からの減額要望には個別対応し、未反映分の使途は「オーナー判断でわからない」と答えた。市は2022年のコロナ禍でも同様の事態が発生しており、下水道料金課の小陳直子課長は「入居者からの問い合わせも参考に、応じない管理者に減額反映を繰り返し呼びかけていく」と述べた。
他自治体でも同様の問題
国土交通省によると、上下水道料金減額はコロナ禍の生活支援として2020年に一部自治体で始まり、終息後は物価高対策に転用。大阪市は2023年10月に上下水道基本料金3か月分を減額し、一括検針の共同住宅約2万5000棟(約53万戸)の一部から苦情が寄せられた。市担当者は「苦情のあった管理会社に減額をお願いしている」と話す。
さいたま市と大分市は実施前に文書で減額反映を依頼したが、入居者から苦情が発生。佐賀市は管理者からの申請があった場合のみ減額分を給付する方式で、該当178棟のうち申請は約4割にとどまり、申請期間を7月末から10月末に延長した。
上智大の中里透准教授(経済政策)は「一部住民に支援が届かないのは政策趣旨に合わない。自治体は管理者に減額への理解を求めるとともに、各戸への検針メーター設置を促す必要がある」と指摘した。
東京都では各戸契約で回避
国内最大の一般家庭約800万世帯に水を供給する東京都は、夏場4か月分の水道基本料金(1世帯平均約5000円)を2年連続で全世帯無償化。都水道局は「無料になっていないとの苦情は把握していない」とする。都給水条例の施行規程で一つの建物に複数のメーター設置が認められており、都内の大半の共同住宅は各戸にメーターが付き入居者と水道局が直接契約しているため、一括検針による未反映を回避できているとみられる。



