冷蔵技術の向上により、臭みの少ない羊肉が市場に出回るようになった。牛や豚に比べて脂質が少ないというヘルシーさが売りで、インバウンド(訪日外国人客)の増加による食の多様化や輸入牛肉の高騰も後押しし、じわりと人気が高まっている。
冷蔵技術向上で臭み減少
羊肉料理を提供する「大阪ひつじフェスタ」が6月上旬、大阪市北区で開かれた。串焼きや、骨付きロース肉を焼いた「ラムチョップ」が売られ、3日間で約3000人が羊肉料理を楽しんだ。主催したのは、羊肉の普及を目的とする豪州の生産者団体「ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア」。2024年から毎年開かれ、年々にぎわいを増しているという。
串焼きを堪能した大阪府四條畷市の会社員女性(33)は「癖や脂っこさがなく、また食べたくなる」。大阪市鶴見区の男性(46)も「子どもの頃は臭みが強いイメージがあったが、全く違って食べやすい」と驚いていた。
羊肉の生産量は中国(24年=264万トン)やインド(129万トン)、豪州(93万トン)が多く、日本はわずか93トン(24年度)ほど。スーパーで売られている羊肉の大半は外国産だ。農林水産省の統計では、羊肉の輸入量はコロナ禍の20年度に1万8871トンと前年度から約3000トン減少したが、その後は徐々に回復し、24年度はコロナ禍以降で最高となる2万537トンとなった。同省は「羊肉の消費は堅調」とする。
その要因の一つが、冷蔵技術の向上による臭みの減少だ。業界団体によると、「BSE(牛海綿状脳症)」が01年に確認された際には羊肉が注目され、ジンギスカンブームが訪れた。一方で、その独特の臭いを敬遠する人も多かった。
羊肉の愛好家らで普及活動を行う「羊齧(ひつじかじり)協会」(東京)などによると、羊肉は脂肪に含まれる成分が酸化すると、特有の臭いが生じやすいという。冷凍の輸入肉は解凍時に肉汁が出て臭いが発生しやすいため、かつてはソーセージなど加工品に使われることが多かった。しかし、近年は冷蔵技術が向上し、0度に近い低温冷蔵(チルド)での輸入が増加。財務省の貿易統計では、1995年度は冷凍品が96%だったが、2025年度はチルドなどが41%を占めた。チルドであれば精肉でも臭みが少ないという。
栄養面でも魅力
羊肉は、栄養面での人気も高い。文部科学省の「日本食品標準成分表」などによると、牛や豚肉に比べて脂質が少なく高たんぱくで、疲労回復に有効な鉄分も豊富だ。
インバウンドと牛肉高騰が追い風
羊肉は宗教上の制約を受けにくく、日本に住む外国人やインバウンドの増加で、食の多様化が進んでいることも追い風となっている。大阪市内で中華料理店を経営する東浩司さん(45)は「麻辣湯(マーラータン)や火鍋で羊肉を試す人もいる。人気の背景には食の多様化があるだろう」と語った。
円安による輸入牛の値上がりが影響しているとの見方もある。農水省の調査では、輸入牛は今年7月、100グラム451円と、5年前に比べて1.5倍に高騰した。羊肉も値上がりしているが、大阪市内の食肉専門商社の担当者は「羊肉は牛肉に比べて珍しいため、高くても選ばれやすい。様々な輸入品が高騰する中、牛肉メニューの一部を羊肉に変更する焼き肉店などが増えている」と話す。
海外ではハレの日のごちそう
羊齧協会の菊池一弘主席は「羊は、海外では王室の晩さん会や祝い事の会場などで振る舞われるハレの日の食材で、ごちそうと捉える国も多い。日本でも食卓に並べる料理の選択肢の一つにしてほしい」と期待する。



