良質な米や水に恵まれた佐賀は、古くから酒造りが盛んで、全国的な銘酒も多い。海外での日本酒人気が後押しする一方、足元では原材料価格の上昇や若者のアルコール離れといった逆風もある。5月に佐賀県酒造組合の会長に就任した天山酒造(佐賀県小城市)社長の七田謙介さん(55)が、酒造業界の現状や今後の取り組みを語った。
佐賀の日本酒は「芳醇うま口」
佐賀の日本酒の特徴について、七田さんは「米のうま味を多く残しており、口当たりがまろやかで、口の中に米特有の甘みが広がる芳醇(ほうじゅん)うま口だ」と説明する。その背景には佐賀の食文化があるといい、「関東などと比べ、しょうゆが濃くて甘く、魚の煮付けもアメのような色になる。こうした食事に合う酒として、今の味わいになった」と話した。
出荷量は減少、主流は「特定名称酒」へ
市況やトレンドについては、「全体的な出荷量は減少傾向にある」と指摘。「30年ほど前までは、『普通酒』といわれる低価格の日本酒が主流で、地域の寄り合いや祝い事で一升瓶がどんと置かれていた。地元の消費だけで経営が成り立っていたが、地域の行事が減り、徐々に売れなくなった。そのため、米を磨いたり、原材料や製法を工夫したりするようになり、最近は純米酒や吟醸酒など『特定名称酒』といわれる日本酒が主流になっている」と語った。
また、「最近はビールなども含めて業界全体が低アルコール化の流れだ。日本酒のアルコール度数は15度前後が一般的だが、若い人向けに10度を切る日本酒を造る蔵元も現れた。この5年だけでも、コロナ禍で生活様式が大きく変わった。時代の変化に合わせ、柔軟な発想で新たなチャレンジをすることは重要なことだ」と述べた。
海外市場を成長の柱に
海外での日本食・日本酒ブームについては、「佐賀の蔵元も十数年前から、積極的に輸出に取り組むようになった。自社も全体の15%程度が輸出で、日本食のレストランが多い米国などに出荷している。国内は人口減少やアルコール離れが進んでおり、将来を考えれば、伸びしろの大きい海外市場にも目を向けなければならない」と話した。



