陶磁器や織物など伝統産業の工房で、ものづくりを体験してもらう「クラフトツーリズム」が各地で活況だ。日本を訪れる多くの外国人らをひき付けており、後継者不足など、産地が抱える課題の解決につながるのではないかと期待されている。
久留米絣の工房で体験ツアー
9月中旬、福岡県広川町の久留米絣工房「丸亀絣織物」に昨年オープンした施設「たてよこ STORE+LABO」で、担当者の男性が絣を手に観光客に説明した。「人の手による『ずれ』が独特の風合いを生むのが特徴です」と語る。
この日、参加者は職人の手業を間近で見学したり、棒で糸をつまみ上げる「つまみ染め」と呼ばれる手法で赤い色を糸に染める作業に挑戦したりした。夫と訪れた鹿児島県姶良市の主婦(46)は「細かな工程の難しさを知ることができた」と目を輝かせた。
産地の価値と職人の誇り
工房の5代目、丸山重俊さん(41)は「産地で体験してもらうと、緻密な工程の積み重ねで生まれる久留米絣の価値を知ってもらえる。職人たちが仕事への誇りを持つきっかけにもなる」と語る。
福岡県は2025年度から、久留米絣の工房で見学や体験ができる旅行商品の開発や、施設整備に取り組んでいる。今年3月には、県の情報サイト「クロスロードふくおか」で6事業者の紹介を始め、予約も出来るようになった。
インバウンド需要が後押し
背景にあるのは、堅調に推移するインバウンド需要だ。観光庁によると、昨年の訪日客は4268万人で過去最高。消費額は9兆円を超えた。クラフトツーリズムへの関心は高く、昨年の大阪・関西万博では、久留米絣協同組合青年部が3日間限定で参加したブースに多くの訪日客が詰めかけ、手織りを体験した。