愛知県犬山市の公益財団法人「日本モンキーセンター」付属世界サル類動物園で、園長を務める下村実さん(61)が、水族館のエキスパートから転身して2年を迎えた。大阪府高槻市出身の下村さんは、幼少期から田んぼの用水路での魚取りに夢中になり、水槽でフナやナマズ、ウナギなどを飼育していた。
水族館から霊長類の世界へ
大学時代はサークル「水産実理研究会」に入り、魚介類や水辺の生き物を追い続けた。卒業後は大阪市が出資した第3セクター「大阪ウォーターフロント開発」に入社し、水族館「海遊館」の発足に奔走。30年余り勤め、ジンベエザメの飼育などに携わった。その後、京都水族館(京都市)、すみだ水族館(東京都)のオープンを手がけ、京都水族館館長、四国水族館飼育展示部長を歴任した。
京都水族館館長時代に霊長類学・人類学で著名な京大名誉教授で、センター理事長の伊谷原一氏と親交を深め、誘いを受けて2024年4月に園長に就いた。
「推し」を応援する来園者との出会い
約50種700頭に上る霊長類を飼育展示する世界屈指の動物園のかじ取り役となったこの間について、「生き物を見てもらうことに変わりはないと思っていたが、発見があった」と振り返る。その一つが、「推し」を応援する来園者がいることだった。「水族館でもニホンザルのようにイワシやペンギンの群れを楽しむ人は多いが、群れの中から好きな動物を見つけ出し、応援することはあまりなかった」という。
70年前の発足以来、同センターが掲げてきた「サルを知ることはヒトを知ること」との理念にあるように、「サルの仲間はヒトに近いところもあれば、遠いところもある。擬人化してはいけないが、感情移入しやすい深い生き物だからだろう」と分析する。
休園前に広がる新たな挑戦
センターは霊長類の保護と生息地の保全を掲げ、研究機関としての役割も果たしているが、「素晴らしい研究成果や面白さを一般の人に伝えるのは難しい」とも語る。これまでの経験も生かし、2024年7月にはオープンスペースで交流できる「園長の部屋」を開設。2025年7月には人脈を生かして特別展「海とサルの交わるところ」を企画し、学芸員や飼育員の取り組みを分かりやすく紹介した。
「『推し』を応援するなど根強い固定ファンに支えられている反面、サルを見たことがなく、生き物の魅力を知らない人にも面白さを伝えたい」と力を込める。センターは19日から長期の休園に入る。整備後の再開を見据え、「今のコミュニティーを維持することは簡単だが、もう一歩広げたい。答えはまだ見つかっていない」と思案している。