株価が下落したとき、現物取引では保有株の売却や買い増しなどが主な選択肢となります。一方、信用取引を活用すれば、株価の下落局面でも利益を狙うことができます。本記事では、信用取引の仕組みや下落相場での活用方法、注意点、初心者向けの信用取引サービスを紹介します。
信用取引とは?現物取引との違い
信用取引とは、証券会社に現金や株式などを委託保証金として差し入れ、証券会社から資金や株式を借りて売買する取引です。自己資金を上回る金額の取引(レバレッジ取引)や、株式を借りて売る取引(空売り)ができます。
現物取引では、原則として自己資金の範囲内で株式を購入します。また、同一の資金を使って同じ日に同一銘柄を繰り返し売買する場合は、差金決済の禁止による制約があります。
一方、通常の信用取引では、委託保証金の約3.3倍まで取引できる場合があります。また、保証金余力や建玉制限などの範囲内で、同一銘柄の反復売買も可能です。
信用取引なら下落相場でもチャンスがある
信用取引を活用すると、株価の下落局面でも利益を狙うことができます。代表的な方法として、空売りとつなぎ売りがあります。
空売り
空売りとは、証券会社から株式を借りて市場で売却し(新規売建て)、その後、株式を買い戻して返済する取引手法です。売買の順序が「売り→買い」となるため、予想どおり株価が下落した場合に利益が発生します。
例えば、株価1,000円で100株を信用売りし、その後900円で買い戻した場合、差額の1万円が利益となります。反対に、株価が1,100円に上昇した場合は1万円の損失です(いずれも諸費用・税金を除く)。ただし、株価が上昇し続けた場合、空売りの損失は理論上無制限に拡大する可能性があります。下落を予想していても、必ず利益が得られるわけではありません。
つなぎ売り
つなぎ売りとは、現物株を保有しながら、同一銘柄・同一株数の信用売りを行う取引手法です。株価が下落した場合、現物株の評価損を信用売りの評価益で相殺できます。反対に株価が上昇した場合も、現物株の評価益と信用売りの評価損が相殺されるため、株価変動による損益を抑える効果が期待できます。
つなぎ売りは、保有株を売却せずに一時的な株価下落に備えたい場合や、株主優待の権利取得を目的とする場合などに活用されます。ただし、信用売りには貸株料などのコストが発生します。制度信用取引では逆日歩が発生する場合もあります。また、配当の権利確定日をまたいで信用売りを保有すると、配当落調整金の支払いが生じるため、現物株の配当金をそのまま利益として確保できるわけではありません。
信用取引の注意点
信用取引には、現物取引とは異なるリスクやコストがあります。
レバレッジに注意
通常の信用取引では、委託保証金の約3.3倍まで取引できる場合があります。少ない資金で大きな利益を狙える一方、損失も拡大する可能性があります。特に信用売りでは、株価の上昇によって損失が膨らみ、自己資金を超える損失が発生することもあります。また、保証金が不足した場合には、追証(追加保証金)を求められる場合があります。
信用取引を検討する際は、レバレッジを抑え、余裕資金の範囲で慎重に取引することが重要です。なお、レバレッジ1倍であっても、損失や追証のリスクがなくなるわけではありません。
コストが発生する
信用取引では、売買手数料のほか、取引内容に応じたコストが発生します。例えば、信用買いでは買方金利、信用売りでは貸株料がかかります。制度信用取引の信用売りでは、逆日歩が発生する場合もあります。これらの費用は保有期間や取引条件によって異なるため、取引前に確認しておきましょう。
株主優待や配当の取り扱いが異なる
信用買いでは、現物株の保有者と異なり、株主優待や通常の配当金を直接受け取ることはできません。信用買いでは株主としての権利を直接取得しないためです。ただし、配当の権利確定日をまたいで信用買いの建玉を保有していた場合、配当金に相当する配当落調整金を受け取れる場合があります。配当落調整金は通常の配当金とは税務上の取り扱いなどが異なるため、注意が必要です。
初心者向けの信用取引サービスもある
信用取引はリスクが高いというイメージを持っている方もいるでしょう。しかし近年は、レバレッジや取引条件に制限を設けた初心者向けの信用取引サービスも登場しています。
SBIネオトレード証券「ライト信用」
SBIネオトレード証券の「ライト信用」は、委託保証金率100%、レバレッジ1倍、建玉上限500万円に設定された信用取引サービスです。通常の信用取引のように自己資金を上回る規模の新規取引を行うのではなく、レバレッジを抑えながら信用買いや信用売りを利用できることが特徴です。
信用取引の売買手数料は無料で、制度信用取引の買方金利は年2.30%、貸株料は年1.10%です。ただし、取引内容によっては別途費用が発生します。ライト信用でも信用売りが可能なため、株価の下落局面で利益を狙う取引を行えます。一方、レバレッジ1倍であっても、信用売りでは保証金を上回る損失や追証が発生する可能性があります。
楽天証券「らくらく信用」
楽天証券の「らくらく信用」は、信用取引が初めての方でも利用を検討できるサービスです。口座開設には、年齢や金融資産などの所定の条件があります。初めて「らくらく信用」で取引をしてから6カ月間は、自己資金の範囲を超えた注文が制限される仕組みです。
このように、初心者向けの信用取引サービスでも、利用条件や取引制限、コストは証券会社によって異なります。仕組みとリスクを十分に理解し、自分の投資経験や目的に合ったサービスを選ぶことが大切です。