宮崎県延岡市の離島・島浦島(しまうらとう)出身の矢崎愛(やさきほのか)さん(27)は、夫の裕敏(ひろと)さん(27)とともに、かつて祖父母が暮らした築65年の鉄筋コンクリート2階建て住宅を約3か月かけてリフォームし、島内にバル喫茶「灯船」を開いた。店は高速艇乗り場近くの路地沿いにある。
バル喫茶は、昼はコーヒーや軽食を楽しめる喫茶店で、夜は酒や料理を味わえる酒場のような業態。店内は落ち着いた雰囲気でカウンター席などがあり、日中は軽食のほか、魚の切り身や水産加工品、カップ麺などの生活雑貨も販売する。
島には漁業者が多く、漁が休みになる明るい月夜など不定期で夜間も営業し、島民や観光客に酒を提供する予定だ。
観光業で島を盛り上げたい
矢崎さんは中学卒業後に島を離れ、延岡高校から関東の大学に進学。国内外のリゾート地で飲食業や観光業に携わり、島内の食堂で働いたこともある。こうした経験から「観光業で島を盛り上げたい」と考えるようになり、バル喫茶の開店を決意した。
開業に当たり、頭に浮かんだのは曽祖父が起こし、巻き網漁を営んでいた会社「有限会社事平丸」だった。船団を組んでイワシやアジ、サバなどを捕っていたが、島の少子高齢化と人員不足のため、父親の森本徳喜さん(67)が経営していた2023年9月に巻き網漁事業を終えていた。
伝統ある会社を残したい
矢崎さんは別の会社を作ることもできたが、「伝統ある会社を残したい」と、事業承継して店の運営主体とすることを選択。「島民に長く親しまれた会社を引き継ぐことで、島のみんなも応援してくれる」と話す。
自分の代で巻き網漁事業が終わったことに責任を感じていたという森本さんも、「会社が残るのはうれしかった」と喜ぶ。
店名の「灯船」は、巻き網漁の船団をリードしながら、集魚灯を使って魚を網に誘い込む役割を担う船と同じ名前だという。今秋には店の近くに貸し切り宿をオープンさせる予定で、矢崎さんは「集魚灯に魚が集まるように、あかりの下に人が集まるような店にしたい」と目を輝かせる。



