戸建て住宅に建物全体の温度や湿度を調整できる「全館空調」を採用する動きが広がっている。コロナ禍を機に在宅勤務が増えたことが要因だ。快適性だけでなく、家の間取りやデザインの自由度を高められるのも人気で、住宅メーカー各社が力を入れている。
採用率が倍増した住宅メーカー
パナソニックホームズの「エアロハス」は部屋ごとに室温を設定でき、センサーで風量を自動で調整する。空気清浄機能も備え、高性能フィルターで花粉やほこりをほぼ除去できる。
全館空調は吹き出し口が多く、風が強くなりすぎない。各部屋の温度差が縮まることで、寒暖差で体調不良を招く「ヒートショック」の発生も減らせるとされる。利用者からは「風が直接当たりにくいので快適に過ごせる」「様々な場所で仕事や勉強がしやすい」などと好評という。
2017年に発売したエアロハスはコロナ禍を契機に導入が広がり、同社の新築戸建てに占める採用率は、20年度の26%から25年度には52%に倍増した。
在宅勤務の普及が需要を後押し
室内機、室外機とも1台で済むのも特徴で、スペースを広く使える。藤井孝社長は「顧客への提案力を高めるのに非常によいアイテムになっている」と話す。
一般的な全館空調の導入費用は200万円前後と高額だ。だが、コロナ禍で在宅勤務が普及し、夫婦が別々の部屋で仕事をしたり、子どもが自室で過ごす時間が増えたりしたことで、各部屋にエアコンを設置する傾向が強まった。ペットがいる家庭もエアコンは増える傾向にある。
多くの部屋に設置すればするほど、全館空調との価格差は小さくなる。こうしたライフスタイルの変化が全館空調の需要拡大を後押ししている。実際、住宅メーカーなどでつくる「住宅生産団体連合会」の調査では、24年度に注文住宅を購入した人の約3割が全館空調を導入しているという。
間取りやデザインの自由度が人気
30年以上前から全館空調を手がける老舗の三菱地所ホームでは昨年度、新築注文住宅の96%に自社ブランドの「エアロテック」が採用された。壁掛けのエアコンが不要になることで空間を広く使え、吹き抜けや書斎を自由に設けられるのが人気の理由という。
関西支店の田中史仁エリア長は「当初注目されていたヒートショック対策だけでなく、間取りやデザインの自由度の高さから選ばれている」と語る。
ヒノキヤグループはダイキン工業や換気設備の協立エアテックと共同で、導入や維持にかかる費用を抑えた「Z空調」を開発した。日常の手入れはフィルターの清掃が中心で、老朽化した場合の交換費用も35万円程度で済み、受注累計は3万5000棟を超えた。
ニッセイ基礎研究所の吉田資上席研究員は「ライフスタイルの変化で、全館空調は『ぜいたく品』から住宅の快適性を高める設備として選ばれるようになった。限られたスペースを効率的に使えることもあり、今後も全館空調は広がるだろう」と話している。



