給与明細の控除欄を見て、思ったより手取りが少ないと感じたことはないだろうか。元国税専門官でマネーライターの小林義崇氏は、手取りを削る最大の要因は税金ではなく社会保険料だと指摘する。年収500万円・独身・40歳未満の会社員をモデルケースに試算すると、所得税と住民税の合計が約36万円であるのに対し、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は約72万円と、税金の2倍以上に上る。小林氏は「社会保険料は個人負担分に過ぎず、勤務先がほぼ同額を負担している。手取りを削る最大の敵は社会保険料であり、その額は想像以上に多い」と強調する。
社会保険料の負担は25年で約1.4倍に増加
第一ライフ資産運用経済研究所の谷口智明氏の分析によると、2000年から2025年までの25年間で、名目給与は約633万円から約713万円へと年平均0.5%しか伸びなかった。一方、所得税・住民税は約48万円から約62万円(約1.3倍)に増加したが、社会保険料は約58万円から約83万円(約1.4倍)へと大きく膨らんだ。同期間の社会保障給付費(年金・医療・介護等)は78.4兆円から140.7兆円に増え、被保険者負担の社会保険料も29.9兆円から43.5兆円へと約1.5倍になった。
所得控除では社会保険料は減らない
小林氏は「ふるさと納税やiDeCo、医療費控除などの所得控除を積み上げても、社会保険料はほとんど変わらない」と指摘する。社会保険料は標準報酬月額と標準賞与額に基づいて計算されるため、所得控除の影響を受けにくい。そのため、社会保険料を減らすには直接的な対策が必要となる。
対策①:給料の「受け取り方」を変える
小林氏は給与の受け取り方を工夫することで社会保険料を抑えられる可能性があると説明する。例えば、給与の一部を福利厚生の形で受け取る方法や、賞与の額を調整するなどの手段が考えられる。ただし、社会保険料が下がれば将来の年金額にも影響するため、総合的な判断が求められる。
対策②:福利厚生の上手な使い方
企業が提供する福利厚生を活用することで、実質的な手取りを増やすことも可能だ。例えば、確定拠出年金(企業型DC)への加入や、社宅・寮の利用、資格取得支援制度の活用などが挙げられる。これらの福利厚生は社会保険料の計算対象外となる場合が多く、手取りを増やす効果が期待できる。
ただし「保険料を下げれば得」とは限らない
小林氏は「社会保険料を下げることが必ずしも得策とは限らない」と警告する。社会保険料は将来の年金額や医療給付に直結するため、安易に下げると老後の生活に影響が出る可能性がある。特に厚生年金は加入期間と報酬額に応じて給付額が決まるため、保険料を安く抑えすぎると受給額が減少するリスクがある。同氏は「短期的な手取り増加と長期的な社会保障給付のバランスを考慮した上で、適切な対策を選ぶことが重要」とアドバイスしている。



