シャープが発表した2026年度第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、売上高が前年同期比7.9%減の4352億円、営業利益が同46.3%減の82億円、経常利益が同64.5%減の65億円、当期純利益が同88.6%減の31億円と、減収減益となった。
営業利益は前期比で改善、自己資本比率も回復
河村哲治社長CEOは、「第1四半期は、全社トータルでは減収減益となったが、営業利益は2025年度第4四半期を上回り、最終利益も黒字を確保した。ブランド事業の売上高は、いずれのセグメントも増収となり、前年同期を上回った。その一方で、営業利益は、メモリなど部材価格の高騰によるコストアップや、販売減に伴う影響を、売価に反映したり、経費削減などによって打ち返したりしたが、為替影響が大きく、減益になった。ディスプレイデバイスは、減収となったものの、営業赤字は縮小している」と総括した。
2026年6月末の自己資本比率は20.2%となり、2022年度第3四半期以来となる20%台に回復した。
セグメント別:ブランド事業は増収も減益
セグメント別では、ブランド事業の売上高が前年同期比4.6%増の3449億円、営業利益は31.5%減の144億円(営業利益率4.2%)となった。
スマートライフは、売上高が同2.6%増の1440億円、営業利益は同45.6%減の37億円。白物家電事業やエネルギーソリューション事業が増収となったものの、テレビ事業が減収。大幅減益の要因として、部材価格の高騰や円安の進行を挙げた。河村社長は「白物家電では、樹脂価格の高騰が大きく影響しているが、厳しい競争環境もあり、価格転嫁が難しい状況にある」と説明。国内では2027年度省エネ基準改訂を前にした駆け込み需要でエアコンが大幅に伸長したほか、海外では米州で調理家電、ASEANでエアコンや冷蔵庫が好調だった。一方、テレビ事業は国内で他社攻勢の影響で減収となり、全体でも前年同期を下回った。
エネルギーソリューション事業は、国内の蓄電所や宇宙用が伸長し、アジアの売上も前年同期を上回った。スマートライフにおける国内B2B事業の売上高は前年同期比40%増と大きく成長した。
スマートワークプレイスは、売上高が同6.1%増の2008億円、営業利益は同24.6%減の107億円(営業利益率5.3%)。DynabookによるPC事業やビジネスソリューション事業が増収となったが、通信事業が減収。メモリ価格の高騰や円安の影響が大きく、先行調達や価格転嫁、モデルミックスの改善を進めたが減益となった。
PC事業は、価格転嫁が進展したことに加え、売価上昇に備えた前倒し需要もあり、国内B2Bや官公庁・自治体向け、GIGAスクール向けが大幅に伸長。第1四半期のPC販売台数は前年同期比3%増となり、Windows 10のEOSに伴う特需があった前年同期実績を上回った。業界団体のJEITAによると、同期の国内パソコン出荷台数は市場全体で前年同期比23.1%減と大きく減少しており、その中でのプラス成長は特筆できる。ただし、通期見通しでは販売台数で前年比30%減としたままで、慎重な姿勢を崩していない。
ビジネスソリューション事業では、オフィスソリューションが各地域で伸長し、MFPも国内外で増収。「MFPは、スマートワークプレイスの収益の柱であることに変わりはない。日本ではコンビニサービスやパブリックプリントの需要が伸びており、欧州でも堅調な状況が続いている。だが、米国は政府予算や教育予算の削減もあり厳しい状況にある。MFPの顧客ベースは、今後のITサービスやAI応用に生きる。B2B事業拡大の基盤になる」とした。
通信事業は、メモリ価格高騰の影響で市況が冷え込んだことに加え、他社攻勢の影響で減収。「通信事業においては、メモリ価格の高騰分を、価格に転嫁するのは難しい」と述べた。一方で、2026年3月に子会社化したシナプスイノベーションとの連携により、ERPを活用した統合ソリューション提案を開始。大手衛星オペレーターのSESと衛星通信サービス分野でのパートナーシップ構築に向けて基本合意するなど、今後の成長に向けた基盤づくりでも成果があった。
ディスプレイデバイスは赤字縮小、在庫増には言及
ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比16.4%減の913億円、営業利益は前年同期のマイナス25億円の赤字からマイナス21億円の赤字に縮小した。「前年同期に米国関税の駆け込み需要のあった車載向けや、PC・タブレット向けが減少して減収となった。だが、構造改革を進めた効果などがあり、赤字幅は縮小した」という。
2026年6月末時点の棚卸在庫は2891億円となり、2026年3月末の2503億円から大きく増えた。小坂祥夫CFOは、「価格が高騰しているメモリの先行調達を行ったこと、亀山第2工場の生産停止に向けた在庫がある。これらを合わせて400億円程度の在庫があり、この分を差し引くと、前年同期水準を下回っており、今後の販売計画に沿った適正水準を維持している」と説明。その上で「2027年度は、メモリの価格が多少は落ち着くかもしれないが、調達リスクがあるとの情報が入っている。年度末に向けて、在庫をいかに確保するか、という点ではしっかりと検討していく必要がある。状況の変化を注視し、適正な在庫の管理に努めていく」と語った。
通期予想を下方修正、営業利益300億円に
2026年度通期の連結業績見通しは、売上高は期初計画を据え置き前年比6.5%減の1兆7700億円としたが、営業利益は190億円減額し同38.2%減の300億円、経常利益は170億円減額し同62.0%減の220億円、当期純利益は170億円減額し同47.3%減の250億円とした。営業利益の下方修正額のうち、約100億円が樹脂および燃料価格、約90億円が為替影響によるもの。
「樹脂や燃料価格の上昇による影響を織り込むとともに、想定為替レートを1ドル156円から160円に見直したことで、通期業績予想を下方修正した。ブランド事業では、スマートライフの売上高および営業利益を下方修正し、スマートワークプレイスでは上方修正した。ディスプレイデバイスは下方修正した」と説明。「現在の厳しい事業環境が年度内まで続くと想定し、業績予想を下方修正している。依然として不透明な状況にあるが、環境変化に機敏に対応し、業績の積み上げに取り組む」と語った。
セグメント別では、ブランド事業の売上高を190億円増額し前年比2.1%増の1兆4620億円、営業利益は130億円減額し同22.1%減の670億円とした。スマートライフは売上高を340億円減額し前年比5.4%増の6300億円、営業利益は160億円減額し同12.1%減の250億円。白物家電を中心に樹脂価格の上昇や為替レート変更の影響を織り込んだほか、テレビ事業の販売減やエネルギーソリューション事業のEPC案件のズレを反映。営業利益の下方修正のうち、樹脂や銅、基板などの素材関連の高騰で100億円、為替で40億円が影響しているという。なお、スマートライフ領域では、様々な機器やサービスと連携する「統合AIサービス」を近日発表する予定も明らかにした。
スマートワークプレイスは売上高を530億円増額し前年比0.2%減の8320億円、営業利益は30億円増額し同27.1%減の420億円。「通信事業では、競争激化によって、売上高が期初想定を下回るものの、PC事業では売価上昇に備えた前倒し需要の取り込みや、価格転嫁の進展によって、マイナスを打ち返せる見込みであることから、売上高を上方修正した。営業利益についても、為替のマイナス影響などがあるものの、販売増に加えて、メモリなどの先行調達やモデルミックスの改善が順調に進んでいることから、上方修正した」という。
ディスプレイデバイスは売上高を190億円減額し前年比28.2%減の3040億円、営業利益は60億円減額したものの、前年同期のマイナス182億円の赤字からマイナス120億円へと赤字を縮小させる。継続事業における顧客需要の変動リスクを反映した。亀山第2工場の生産停止に向けたプロセスは順調に進捗しており、売却交渉についても複数の相手先と話し合いを進めていることを示した。
なお、2026年10月1日付で、ディスプレイデバイス事業に関連する国内法人などをシャープに再統合する計画も発表。「これまでのアセットライト化への取り組みに続き、事業運営の効率化およびガバナンス強化を目的としたものである。今後は、高付加価値製品を中心とした事業成長に加え、シャープのなかに統合することで、ディスプレイ関連技術を活用した新規事業の創出を進め、新たな収益源の獲得を目指す」としている。統合対象は、シャープディスプレイテクノロジー(SDTC)、シャープフロンティアオートモーティブテクノロジー(SFAT)、シャープ米子(SYC)、シャープディスプレイカラーフィルター(SDCC)で、三重県津市安濃町に本社を持つシャープディスプレイマニュファクチャリング(SDMC)の白山工場における液晶パネル生産事業も統合する。
AIサーバー事業や鴻海との連携強化
シャープブランドでのAIサーバー事業の展開に向け、事業スキームおよび諸条件の具体化を推進しており、9月に内容を説明する予定で、事業を本格的にスタートする計画を明らかにした。「シャープブランドでAIサーバー事業を展開していくことは決定している内容である。現在、どういうパートナーと組んで、受注活動を行っていくのかなどを詰めているところだ。事業化が間近に迫っている。受注や納入のリードタイムを考えると、2027年度からの売上計上が中心になる」などとした。今回の説明会では、シャープのロゴが入ったAIサーバーも公開した。
また、AIインフラ関連では、AIロボットやフィジカルAIの開発基盤となる国産マルチモーダル基盤モデルの研究開発を推進するNoetraに出資したことも示した。さらに、鴻海との連携強化を進め、2026年10月に台湾に新拠点を設立することを明らかにした。台湾・台北市内湖にある鴻海の拠点内に設置し、「新規事業を担当する鴻海研究院と隣接した場所であり、鴻海が持つ新規技術を学ぶとともに、シャープが持つ映像技術や通信技術を融合し、共同で新たな事業開発につなげていく」とした。2026年6月には、鴻海と新規事業における戦略的協業に関する覚書を締結しており、「AIインフラ・ソリューション」「エネルギー・ESG関連アプリケーション」「ロボティクス/スマートオートメーションシステム」「次世代通信技術」「スマートシティ」の5つの領域で協業を推進することを明らかにしている。



