生成AIへの過度な期待が一巡した今、多くの企業で「AIツールを導入したが、個人の作業が少し速くなっただけで会社全体は変わらない」というため息が広がっている。野村総合研究所によると、国内で生成AIを「全社活用」できている企業はわずか11%に留まる。
セールスフォース・ジャパンに300のAIエージェント
そんな中、顧客基盤大手のセールスフォース・ジャパンでは、実に300ものAIエージェントが自律的に動き回っている。同社がAIエージェントを使い実施するのは、現場任せの「ボトムアップの効率化」ではない。「どの業務をAIに任せ、どこに人を配置するか」を経営層が決め、業務フローの再設計から人材配置までをセットで組み替えるトップダウンの組織マネジメントだ。
「4R」フレームワークで組織と人材を再設計
同社の「4R」フレームワークは、リデザイン(Redesign)、リスキル(Reskill)、リデプロイ(Redeploy)、リバランス(Rebalance)の4つから成る。リデザインはビジネスと組織のモデルそのものを再設計し、何を人が担い、何をエージェントに任せるかを見直すこと。リスキルは、マネージャーがAIを活用し生産性を上げる議論に加え、業務フローそのものをマネージャー自身が変えていくスキルが求められるという。リデプロイは人材を適材適所に再配置することで、大企業向け専門部署「ECS」の新設もその一例だ。リバランスは「エージェントに任せる領域をさらに広げられないか」「より良いやり方はないか」を継続的に振り返り、役割やリソース配分を見直していくことだ。
現場に生まれる新しいキャリア
この取り組みにより、現場のマネジメントの在り方にも変化が生じている。従来は「人を管理するマネージャー」しかいなかったが、今では「エージェントを管理するマネージャー」や、これまで人を管理していなかった担当者がエージェントの管理という新しい役割を担うケースも出てきている。今後、マネージャーには単なる管理者としての役割よりも、人にしかできないコーチングの領域や、より能動的に業務変革を進めていく力、人間関係を構築する力といったスキルがより重要になると考えられる。



