お好み焼きチェーン「千房」(大阪市)の中井政嗣会長(80)が7月31日、鳥取市のとりぎん文化会館で講演し、元受刑者らの就労支援に取り組んできた経験を語った。同社は2009年以降、73人の元受刑者や少年院出院者を受け入れてきた。
創業期からの取り組み
同社は1973年創業。現在、関西を中心に国内外に62店舗あり、従業員は約1100人。創業期には人手不足もあり、「一緒に働いてくれる人なら誰でも迎える」と学歴や経歴を問わず採用してきた。かつて暴走族に所属していた人もいたという。
2008年、それを知った法務省から受刑者らの就労支援の打診があった。山口県美祢市の美祢社会復帰促進センターを視察した際、担当者から「出所者の約半分が再犯で戻ってくる。そのうちの約7割が無職。職に就くことが再犯予防につながるので、ぜひ雇用してほしい」と依頼された。
「何かあったら責任を取る」と決意
会社の役員会では元受刑者の雇用について「賛否両論だった」といい、「『お客さんが怖がって来てもらえなくなったら、会社が潰れますよ』という声もあった。でも、『いいことをしている』と応援してくれるお客さんもいるはずだと思った」と振り返る。最終的に「何か起こったら、全部自分が責任を取る」と覚悟を決めた。
中井会長は「雇用主がオープンにすること」にこだわった。当時から出所者らを雇用する「協力雇用主」の制度があったが、「どういう会社が、どういう人を雇用しているのかは伏せられていた」という。「元受刑者の受け皿は社会。社会の思い込みや偏見を少しでも取っ払うためには、千房が元受刑者の就労支援をしていることを社会に見せることが、何よりも大事だと思った」と話す。
「職親プロジェクト」を発起
テレビや新聞の取材に応じ、刑務所での受刑者との面接時もカメラを入れた。「お客さんが怖がって来てもらえなくなったら」と心配もしたが、放送後「匿名で1人から嫌がらせがあっただけだった」と振り返る。
中井会長は2013年、就労だけでなく住まいや仲間作りなども支援する「職親プロジェクト」の発起人となった。日本財団と関西の7社でスタートした同プロジェクトは、参加企業数が約1500社になり、計2000人以上の元受刑者や少年院出院者らの就労につながった。
「反省は1人でできても、更生は1人ではできない」と話した中井会長。講演の最後に「元受刑者や少年院出院者を雇用することが当たり前の社会を目指したい」と訴えた。
講演会は県と鳥取刑務所の主催で開かれた。



