出版取次大手「日販グループホールディングス(HD)」の子会社が、米国のAI(人工知能)開発企業「アンソロピック」に日本の書籍を無断で販売していたことがわかった。出版関係者によると、出版社団体「日本書籍出版協会(書協)」が問い合わせたところ、日販側が販売を認める回答をしていたという。
AI学習用スキャン対象に日本の書籍か
アンソロピックはAI学習のために大量の書籍をスキャンするプロジェクトを進めていたとされ、日本の書籍も対象になっていた可能性がある。米国の裁判資料では、収集した大量の書籍が保管されているとみられる倉庫の様子が開示されている。
米国での訴訟と日販の関与
アンソロピックを巡っては、米国の作家らが2024年8月、書籍のデジタル化や海賊版サイトからの書籍データ入手によって著作権を侵害されたとして、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提訴した。裁判資料によると、同社は欧米やアジアの出版流通業者から大量の書籍を買い集めており、その中に「Nippan Japan」という日販とみられる社名が含まれていた。
書協の問い合わせと日販の回答
関係者によると、書協は日販グループHDに対し、会員出版社の発行物をアンソロピックに販売したかを問い合わせ、AI学習を目的とした書籍の供給や販売をやめるよう求めていた。日販側は2024年12月から2025年12月に販売した事実を認めた上で、AI学習への利用を目的とした書籍購入とは認識していなかったと回答したという。
著作権法の現状と出版社の反応
日本の著作権法では、30条4の規定で、AIに文章やイラストなどを著作権者に無断で学習させることが原則認められている。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には無断学習できないという制限もある。AIによる無断・無秩序な著作物利用が広まれば、出版社などに大きな打撃を与えかねない。著作物のAIによる学習やスキャンの違法性については、結論が出ていないとされる。
日販の対応について、出版関係者からは批判の声が上がっている。ある出版社の幹部は「日本の出版文化を守るべき立場にある日販が、出版文化を損ねるようなことをするのは許せない」と語った。