豆苗30年100円の謎:村上農園社長が明かす「値上げしない」戦略の真実
豆苗30年100円の謎:村上農園社長の戦略

村上農園(広島市)が販売する豆苗(とうみょう)は、1パック100円前後で30年間価格が変わっていない。あらゆるコストが上昇する中、この価格を維持できる理由について、同社社長の村上清貴氏がその戦略を明かした。

「売れない野菜」をあえて作る逆転の発想

村上農園は、レタスやトマト、キャベツ、白菜といった主要野菜を生産しない。植物工場を持つメーカーとしては異例の方針だ。一般的な植物工場は需要の高いレタスやトマトを手がけるが、村上社長はこれを「負けパターン」と断言する。

「工場の野菜は品質面で、外で育った野菜に勝てません。ストレスがないからです。風や雨、気温の変化など、ストレスのある環境で育った方が、しっかりした味のいい野菜ができやすい。温室育ちはダメなんですよ」

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さらにコスト面でも、露地野菜は太陽光と雨水で育つためエネルギーコストがほとんどかからないのに対し、植物工場は電気代や空調代がかかる。村上社長は「品質で負け、コストでも負ける」と指摘する。植物工場の野菜が求められるのは、気候不順で露地野菜が高騰した時だけであり、価格が下がれば「もう要りません」と捨てられる存在だという。

そこで同社は「売れない野菜」を選ぶ戦略をとった。豆苗やブロッコリースプラウトは、村上農園が手がけ始めた頃はマイナーな存在で、「なくても誰も困らない野菜」だった。競合が存在しないため、価格を自ら決めることができ、ブルーオーシャンで市場を創出する戦略が、村上農園の商品戦略の起点となっている。

リクルートで学んだブルーオーシャン戦略

この発想は、村上社長が前職のリクルートで培ったものだ。リクルートは「マーケットのないところを開拓していく」企業であり、求人情報誌の例が典型だ。ハローワークやコネに頼る時代に、雑誌で企業と求職者をマッチングするサービスを確立した。しかし、市場が儲かるとわかれば追随する他社が現れ、大手新聞社が参入して値下げ競争が予想された。その時、リクルートは値下げではなく、販路を書店からコンビニエンスストアやキオスクに変えることで競争を回避した。つまり、設置場所のブルーオーシャンを狙ったのだ。

村上農園も同様に、米やキャベツ、白菜といった「売れている」野菜は作らない。O-157事件後の反撃期に、カイワレ以外の野菜として豆苗やブロッコリースプラウト、外部委託のルッコラやハーブを手がけたが、これらはすべて「日本にまだ確固たる市場がなかった野菜」だった。競合がないため価格を自ら決められ、量販店への提案も「面白いね、やりましょう」とスムーズに進んだ。

30年間100円を貫く理由と成長の軌跡

村上農園は、O-157の風評被害を含む4度の経営危機を乗り越え、2025年には売上高132億円と過去最高を記録した。豆苗の価格は発売以来30年間、1パック100円前後で維持されている。コスト上昇に直面しても、ブルーオーシャン戦略により価格競争に巻き込まれず、自らの市場で価格決定権を持つことができたからだ。

村上社長は、「農業ではなく『脳業』」と表現し、観察、記録、考察、栽培を重視する。生産拠点は沖縄から北海道、さらには海外にも広がっている。同社の戦略は、単なる価格維持ではなく、独自の市場を創出し続けることで持続可能な成長を実現している。

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