岐阜県中津川市付知町の山奥に位置する「スーパーやまにし」は、一見すると普通の地方スーパーだが、2023年2月に全国の小売店を対象としたコンテストで最高賞である「農林水産大臣賞」を受賞した「日本一のスーパー」だ。1930年創業の家族経営で、現在の店主は4代目にあたる西尾真朋さん。妻の夏子さんと二人三脚で店を支えている。
親しみやすさと洗練された空気が同居する店内
店内に入ると、地方スーパーらしい親しみやすさと、セレクトショップのような洗練された空気が同居していることに気づく。自家製のみそやたまりしょうゆ、岐阜県の郷土料理「鶏(けい)ちゃん」(鶏肉とキャベツを濃いめのみそ・しょうゆだれで炒めた料理)が並ぶ一方で、大手スーパーでは見かけないパンやソーセージ、アイスクリームなど全国から集めたこだわりの商品も並ぶ。これらはすべて、西尾さんが実際に食べてみて自信を持って薦められるものだという。
手書きチラシでウインナー250袋、ホッケ200枚を販売
同店の販促手法もユニークだ。手書きのチラシを定期的に発行し、ウインナー250袋やホッケ200枚を販売するなど、地元客の心をつかんでいる。このような地道な努力が、日本一の評価につながった。
大手ドラッグストアの出店で危機に直面
しかし、栄光の道のりは平坦ではなかった。かつて大手ドラッグストアの出店により、売上が激減する危機に直面した。西尾さんは「その時、地元の食を守らなければと強く思った」と振り返る。この危機が、独自路線への転換点となった。
自家製みそとたまりしょうゆが店の名物に
店のモットーは、「付知の食に喜びを 付知の食で悦びを」。西尾さんは「みそやたまりしょうゆ、鶏ちゃんなど付知ならではの食で地元以外の方に喜んでいただくことと、地元の方の食に彩りを提供させていただくこと。その2つの意味があり、食べることが楽しくなる店を目指しています」と語る。自家製みそとたまりしょうゆは特に人気で、店の看板商品に成長。道の駅などでも販売されるまでになった。
百貨店仕込みのデパ地下風戦略
西尾さんは百貨店での勤務経験があり、その経験を生かして「デパ地下風」の品揃えと演出を導入。高級感と親しみやすさを両立させた独自のスタイルが、地元客だけでなく県内外からの来客を集めている。
農林水産大臣賞受賞の決め手
審査員からは「地域密着型でありながら、全国に通用する商品開発力と販売戦略が評価された」との声が聞かれた。同店の取り組みは、地方スーパーの新たなモデルケースとして注目されている。



