M&A(企業の合併・買収)の仲介業者で最大手の日本M&Aセンターで、不適切な仲介事案が判明した。業界団体がトラブルを防ぐために導入した対策をすり抜けており、同社は担当社員を7月に解雇した。
特定事業者リストの登録逃れ
同社の経営トップが代表理事を務める業界団体のM&A支援機関協会は、「不適切な買い手」を排除する狙いで「特定事業者リスト」の運用を2024年に始めた。退職金や株式代金を踏み倒したり、不当な資金の引き抜きと認められたりするなど、問題が起きた買い手を登録し、会員が取引をするときの参考にしている。
24年の朝日新聞報道で、中小企業のオーナー経営者らが会社の株式をM&Aで手放したあとも、銀行融資などで連帯保証人となる「経営者保証」が外れず、会社の借金に責任を負い続けるトラブルが続出していることが発覚した。このため、協会は株式譲渡後60営業日以内に保証を外さない買い手はリストに自動登録することとした。
虚偽回答を働きかける
新たに問題が起きたのは、昨年11月に東北地方の会社の株式が譲渡された事案。今年3月時点で1億円超分の保証が残っていたのに、日本M&Aセンターの仲介担当者と買い手側が売り手の社長に対し、保証の解除を確かめる同センターの担当部署の電話に「全部解除された」と虚偽の回答をするよう働きかけた。売り手は最初の電話で未解除と伝えていたが、2度目の電話で「全部解除」と答えを修正した。
このため、実際には保証が外れていないのに、買い手がリストに登録されるのを避けていた。その後、売り手側が保証の解除などを求める弁護士の通知を6月下旬に買い手と日本M&Aセンターに送ったことで問題が発覚した。
弁護士が構造的問題を指摘
売り手の代理人、柴田堅太郎弁護士は「中立・公平の義務に反する」と指摘。売り手は1度きりの取引が多いのに対し、買い手は企業買収を繰り返すリピーターになる可能性があるため、「(仲介業者が)大事な顧客を守ろうとする構造的な問題があるのでは」と話す。
日本M&Aセンターは取材に…この記事は有料記事です。残り428文字。



