仕事の生産性を上げる会議改革 パーキンソンの法則で時間管理し、定例会議にはサンセット・ルールを実践する
仕事の生産性を上げる会議改革 パーキンソンの法則で時間管理し、定例会議にはサンセット・ルールを実践する

社内の会議が多く、顧客に会う時間や生産性を確保できないという悩みは根深い。一人で決めるのが怖くて会議に出席するケースもあれば、目的が曖昧なまま開催される会議もある。本稿では、会議を効率的に運営するための具体的なヒントを整理する。

パーキンソンの法則で会議時間を管理する

「パーキンソンの法則」は、英国の歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが当時の行政組織を研究する中で、組織・運営と人間の心理作用に関する非合理的な行動を分析した法則だ。第一法則「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と、第二法則「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」の2つから成る。会議には第一法則が当てはまり、1時間の会議は1時間フルに使ってしまう。そのため、会議の目的に応じて1時間、30分、15分、5分と時間を細かく管理するのが有効だ。

5分は短く感じるかもしれないが、実際には長い。エレベーターピッチを20回行えるほか、大半の楽曲を聴き終えられる。準備をしっかりすれば、5分を効率的に使える。リーダーシップ書の名著『1分間リーダーシップ』『新1分間マネジャー』(ダイヤモンド社、ケン・ブランチャードら著)にもある通り、アジェンダを明確にすれば、1分間さえ長く感じる。

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目的・参加者・成果を明確にする

筆者が米国WorkdayでSales Operations & Strategyとして勤務していた際、同社はオペレーションに優れ、会議の実施方法も徹底していた。会議の目的、参加者、会議から生み出される結果を明確にし、招待メールに明記する。これによって「とりあえず参加」する人をなくせる。背景には権限移譲の進展があり、権限を持つ人が意思決定をする場合もある。決定権のない人が集まっても、会議は生産的にならない。

近年はAIで議事録を簡単に作成できるため、とりあえずの参加者には生成された議事録を送れば済む。Workdayでは会議の終わりにNext Action(次の行動)を明確にし、次回までに進捗させることを重視していた。2007年ごろにCisco Systemsで働いていた際は、どのような会議でも自社のWeb会議システム「WebEx」が使われていて驚いた。AIによる議事録作成や録画による情報共有を容易にするため、対面の会議でもWeb会議システムを活用するのは有効だ。

定例会議に賞味期限を設ける

多くの組織を苦しめるのは、「以前からやっているから」という理由だけで続く定例会議だ。ここではサンセット・ルールの導入を勧める。日没=定例会議の終了時期をあらかじめルールとして決めておくのだ。例えば「すべての定例会議は3カ月ごとに見直し、継続の必要性を再定義する」といったルールを、定例会議の設定時に適用すればいい。

目的を達成したプロジェクトの会議や、報告がAI・チャットツールに置き換わった会議は、勇気を持って廃止する。会議を増やすのは簡単だが、減らすには仕組みが必要だ。やる・やらないを明確にすることが戦略の第一歩である。

全員参加の義務を捨てる

会議効率化の究極のヒントは、出ないという選択肢を認めることだ。イーロン・マスクはテスラの従業員に対して、「自分が貢献できていない、あるいは価値を得られていないと感じた会議からは、すぐに立ち去るか、参加を断るように」と伝えている。これは失礼ではなく、相手の時間を無駄にすることこそが失礼で無駄だという考え方だ。

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筆者はマイクロソフト時代、報告だけの定例会議が無駄だと判断して参加しなかった。無断だったため上司には嫌われた。だからこそ、欠席という選択肢が認められる仕組みが重要なのだ。会議に明確な役割がなければ、思い切って欠席し、後ほどAIが作成した議事録を確認する。それだけで、自分のスケジュールをより高い価値を生む業務のために確保する自由が生まれる。

立って行う会議とコスト意識

アジャイル開発などでよく取り入れられる手法として、立って行う会議も効果的だ。座り心地の良い椅子に座ると無意識にリラックスし、話が横道に逸れたり議論が長引いたりしやすい。立ち会議なら適度な緊張感が生まれ、全員が早く結論を出して実務に戻ろうという心理になる。15分以内の短時間会議に極めて有効だ。

会議はコストだという認識も欠かせない。10人が集まれば、給与を時間換算した10人分のコストがかかり、役員が含まれればさらに大きい。

会議を減らし効率化することは、単なる時短術ではない。本来向き合うべき顧客や創造的な仕事に充てるための貴重な資源を取り戻すプロセスだ。「とりあえず集まる」文化から「仕組みによって価値を生むために集まる」文化へ、一歩を踏み出したい。

著者

北川裕康(キタガワヒロヤス)。現在は独立して、経営・営業&マーケティングのコンサルティングサービスを上場企業やベンチャー企業、および外資日本法人に提供。2025年3月末までAI inside株式会社の執行役員CPO(Chief Product Officer)。38年以上にわたりB to BのITビジネスに関わり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Infor、IFSなどのグローバル企業でマーケティング、戦略&オペレーションなどの執行役員を歴任。大学では計算機科学を専攻し、富士通とDECでソフトウェア技術者の経験も持つ。前データサイエンティスト協会理事。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に関心を持ち、学習して仕事で実践。書くことが趣味で、連載や寄稿多数。