思想なきHV回帰、見えない将来の姿
ホンダは5月12日、四輪事業の立て直しに向けた中長期戦略を発表した。脱エンジン目標の撤回、HV(ハイブリッド車)を軸とした商品戦略、日本・北米・インドの3地域への集中、開発費用・期間・工数の半減などが柱だ。しかし、長年自動車業界を分析してきたナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表アナリストは、この戦略に「思想が見えない」と厳しい評価を下す。
「HV回帰自体は理解できるが、なぜHVなのか、その先の将来像が全く見えない。単なる延命策に過ぎない」と中西氏は指摘する。ホンダは1957年の上場来初の最終赤字を記録し、中国勢との競争激化、ソフトウェアや自動運転など開発領域の高度化に直面している。
関税リスクと北米に迫る中国車の脅威
中西氏は、ホンダの北米戦略にも疑問を呈する。「関税リスクは確かに大きいが、それ以上に中国車の脅威が北米市場に迫っている。ホンダは中国市場で既に苦戦しており、その教訓を北米に活かせていない」と語る。ホンダの中国販売は2024年に前年比30%減と急落しており、中国勢のEV攻勢に押されている。
「ホンダは『日本・北米・インド』の3地域に注力すると言うが、それぞれの地域で勝つための具体策が不足している。特に北米ではHVだけで戦えるのか、EVへの移行時期をどう見極めるのか、明確なビジョンが必要だ」と中西氏は強調する。
開発改革の実効性と若手抜擢人事の重要性
開発費用・期間・工数を半減するという目標について、中西氏は「数字だけが独り歩きしている。具体的にどのプロセスをどう変えるのか、現場レベルでの改革が伴わなければ達成は難しい」と指摘。ホンダは2025年4月に三部敏宏社長が就任し、若手への抜擢人事を進めているが、中西氏は「若手の登用自体は良いが、彼らに権限と責任を与え、失敗を許容する文化が必要。トップダウンだけでなく、現場からのボトムアップをどう引き出すかが鍵だ」と述べる。
ホンダのEV戦略については、「第2幕」と称した新たなEVプラットフォームを2026年に投入予定だが、中西氏は「それまでに中国勢やテスラ、欧州メーカーとの差はさらに広がっている。ホンダにはスピードと大胆な決断が求められる」と警告する。



